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182.メロンパンからの。
◆◇◆
研究室でたくさんのパンを広げて食べながら、竜が苦笑する。
「はーそれでこんなにパンばっかり……」
「そう」
瑛士さんの、オレがここで言うには恥ずかしすぎるセリフはなしにして、一緒にホテルで泊まって朝ごはんをパーキングで食べて、余ったパンを持ってきたこと、だけを話したところ。
「へー」
意味ありげに長めに言ってから、竜は、ぱくっとメロンパンにかぶりついた。
「――にしてもなんでこんなに買ったわけ? 余るにしても買いすぎじゃねえの?」
「ん。余ったら、学校に持ってったらいいと思ったみたい……」
「ふうん……てか、めっちゃ甘い。オレ、すげー何年かぶりにメロンパン食ったわ」
そんな風に言う竜に、ふ、と笑ってしまう。
「確かに竜は甘いものあんまり食べないもんね。それ、半分、オレ食べるよ。竜はカレーパンとか食べたら」
「ん」
半分にしてオレが受け取ると、竜は、カレーパンを食べ始めた。
「――にしてもさぁ……」
くっ、と竜が笑い出す。
「オレ昨夜、時計見てちらっと思ったんだよ。凛太は今頃もう終わったのか、とか。んで、ちらっと瑛士さんが浮かんでさ」
くっくっと、笑ってる竜に、「そうなの?」と返すと、竜は笑いながら、首を振った。
「でもまさか、瑛士さんもそんなとこまでは行かねーよな、と思ったんだけど……」
水を飲んで、オレをちらっと見つめて、少し肩を竦めた。
「まあ……なるほどって感じだな」
「竜は、瑛士さんの行動、なるほどって思うの?」
「――まあ今回は、さすがに遠いし、行かないだろうって思ったんだけどな。行ったって聞くと、そうなるのか、とは思う」
「……それは、同じαだから分かるの?」
そう聞くと、竜は、ん、と一旦口を閉ざした。顎に手を掛けて、少し考えてから、笑った。
「オレはまだ、そんなに執着する奴と出会ってねーから。適当に遊んでる奴にはそんなことするわけないし。……ただ、瑛士さんがそうだっつーのは分かる」
「何回かしか会ってないのにね」
「そんだけ、分かりやすいってことだな」
言いながらまたパンを食べる。
オレもまたクリームメロンパンを食べながら、その甘さに、なんとなく瑛士さんの笑顔を思い出す。
――瑛士さんのあの恥ずかしめなセリフの数々を、竜はほとんど聞いてないのに。どうしてわかりやすいって言うのかなあ。
鋭いっていうのは、あるだろうけど。
「こんちはー」
研究室のドアが開いて、斎藤が入ってきた。斎藤はαで、今まではあんまり話さなかったけど――それこそ、あの瑛士さんが飲み会に来て以来。ちょっと挨拶をしたり話したりするようになった。
「お。何そのパン。たくさん、どしたん?」
「食べる? ちょっと余ってて」
「え、いいの? ラッキー」
そう言いながら、斎藤は、オレの隣に腰かけた。
「これ貰っていい?」
「うん。どうぞ」
メロンパンをひとつかじりながら斎藤が言った。
「うま~。どしたの、これ」
「凛太の婚約者がやまもり凛太に買ってあげて、余ったらしい」
「へー……? 愛されてるってこと?」
オレのかわりに応えた竜に、斎藤が言うと、竜は笑いながら肩を竦めてる。
「まあでも、三上の婚約者は、あの時も、そんな感じだったよな」
「……そんな感じって?」
「大事な大事な婚約者、て感じ? そういやさ」
斎藤がオレをまっすぐに見つめて言った。
「あんなスーパーなαとどこで知り合ったの?」
「え」
「普通なら接点無いだろ、あんなα。年も違うしさ。これは別に釣り合わないとか悪口じゃないよ? ただ純粋に不思議」
そう言われて、苦笑してしまう。
「釣り合わないのは、そうだと思うから、別に全然気にしないけど……」
そう言いながらちょっと考える。
出会いは……あのあやしい店の前。
話してたら、利害が一致。
オレは父に頼らないお金と勉強する時間。
瑛士さんは、対外的な婚約者。
しかも、普段から瑛士さんの仕事とかに関わる訳でもなく完全に無関係な立場で、瑛士さんのフェロモンにあてられず惹かれず、ちょうどいい距離感で契約関係を続けられそうなオレはちょうどよかったのだろうなぁ……。
――なんて、言える訳もない。
それを大体知ってる竜は、なんだか面白そうに、オレを見ている。
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