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第5話 声じゃないもの

風が吹いて、桜の花びらが舞った。 無言のまま、レンくんが手を伸ばして、俺の肩に落ちた花を払う。 その手がふわりと止まって、ほんの一瞬、俺を見た。 「......なんでもない」 そう言った声よりも、触れなかった指先の温度が、まだ胸に残ってる。

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