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第10話 ぬくもりを知ってしまった

境内を出るまで、ふたりとも無言だった。 けど、帰ろうとしたその瞬間―― 「……待って」 レンくんの手が、俺の袖をそっと掴んだ。 「もうちょっとだけ、このまま」 そう言って、小さく差し出された手。 指先が触れた瞬間、 夜の空気の中で、そこだけふんわりと、あたたかくなった。

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