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第25話 この手で確かめたくて

境内の掃除が終わったあと、ふたりだけの時間。 何も言わず並んで座っていたら、 ふいに、レンくんが俺の袖をつかんだ。 「……あのとき、ちゃんと届いてたよ。君の声」 目を伏せながら、少しだけ顔が赤い。 「それに、僕……」 言葉の途中で、指先がそっと触れてきた。 握られるというより、そっと重ねられるような感触。 「……もうちょっと、近くにいてもいい?」 「うん、もちろん」 あったかい手だった。 その小さなぬくもりが、ずっと離れなかった。

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