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第26話 あと少しの距離

夜の神社。風鈴の音が、微かに響く。 「……今日、帰りたくないな」 レンくんがつぶやいたその声が、妙に近く感じた。 境内の縁側で、肩がふれそうな距離。 「泊まっていけば?」 冗談のつもりで言ったのに、 彼は小さく笑って、 「ほんとに、いいの?」って、目をそらさない。 心臓が跳ねた。 手を握ることも、キスをすることも、 今なら、きっとできた。 でも――まだしなかった。 その夜の静けさに、 恋が芽吹く音だけが、聞こえていた。

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