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第29話 そんな顔、見たことない

帰り道、クラスの女の子に声をかけられた。 「悠馬くんって、いつも一緒にいる子と仲いいよね」 何気ない一言。でも―― 横にいたレンくんが、その瞬間、黙った。 「……ふーん」 少しつりあがった声と、目線のそらし方。 それは、初めて見る表情だった。 「なんか、ヤだな。そういうの」 ぽつりと落ちた言葉に、 俺の胸が、きゅっと音を立てた。 “今の、もしかして……やきもち?” 気づいたとき、 どうしようもなく、レンくんが愛しくなった。

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