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第7話

夏休みが終わるとすぐ文化祭の話し合いになった。この学校は6月に体育祭を行い、10月に文化祭を行うらしい。この時期に大きめのイベントを行なって3年生の受験は大丈夫なのか?と思うが、その辺り上手く出来ているとのこと。 「それじゃあうちのクラスの展示は天体模型に決定でーす!」 クラスに歓声が上がった。みんなお化け屋敷や食べ物の屋台をやりたがったが、この学校には一年生は展示系しかしてはいけないという暗黙の了解がある。しかしそれでも文化祭バフというべきか、この時点で既に盛り上がりは激しい。 「それじゃあ班分けするから入りたいところあったら手あげてねー 」 黒板に班が書かれていく。太陽、月、地球と、それから展示とは別にフォトスポット……?そこちょっとやってみたいけど……やりたい人多いだろうなぁ。 「朝倉くん聞いてる?」 「えっ何?」 「朝倉くんセンスいいからフォトスポットやってって 」 「ああ……うん、わかった 」 返事をすると、フォトスポットの下に自分の名前が書かれた。……待っておれが班長?やりたくないけど……でもセンスいいって言われたしな……。 そこからどんどん班が決まっていく。全ての班が決まり終わった頃、「学年一の集客数目指すぞー!」と、教室は今日イチの盛り上がりを見せた。 + 「って感じで、なんかおれが班長になったんでしばらく一緒に帰れないです 」 「他のやつに押し付けようぜ。班長だしそんくらい許されるだろ 」 「片桐先輩じゃないんだから…… 」 軽口を叩きながら昼食に購入したうどんを啜る。今日はきつねうどん。甘辛く炊かれたお揚げが出汁の味と混ざって美味しい。 「先輩のクラスは何やるんですか?」 「カジノ。ルーレットとポーカーしか用意しないけど。一回の入場で500円までチップと交換できて、そのチップで景品と交換できる感じ 」 「面白そう……」 「んじゃ当日うちのクラス来いよ。勝たせてやるから 」 「いらないですよ。おれポーカー強いんで 」 本当かなーと片桐先輩はニヤニヤしながらこちらを見つめる。真偽はどうであれ、相手してくれるなら全力で勝ちに行かせてもらおう。 汁まで飲み切って完食。食器を一緒に片付けてくれるらしく、任せて自分は荷物を二人分持っていることにした。 + 放課後になり、フォトスポットの場所取り会議……に行く途中。偶然か、片桐先輩と廊下で遭遇した。 「よっ 」 「おれちょっと急いでるんですけど 」 「まだ時間あるだろ。スマホある?」 「ありますけど……あっ 」 差し出すと取り上げられ、一枚自撮りをして返された。 「はい、お守り 」 「なんのですか……」 なんとなく写真をチェックした。……なんか気に入らないなこれ。 「じゃあな」と去ろうとした先輩を呼び止め、撮り直すことに。おれが構ってくれるのが嬉しいのか、片桐先輩はニコニコしながら「こう?」と被写体になってくれている。 「多分おれの方が人の写真撮るの得意ですから 」 「ふーん。んじゃツーショする?」 「調子に乗らないでください 」 二枚ほど気に入った写真が撮れ満足した。 ……何か忘れてるような? 「春樹、会議いいの?帰る?」 「忘れてた!」 急いで会議が行われる教室に向かった。案の定ちょっと遅刻だったし視線が痛かった。 「遅刻くんさぁ、名前なんだっけ朝倉くん?フォトスポットだよね。校門の前でいいんじゃない?」 「おれもそう思うんですけど……クラス委員にこの場所取ってこいって言われてて 」 「ふーん。じゃあクラス委員説得してよ。ここアタシらの屋台使いたいから 」 「何の屋台出されるんですか?」 「ケバブ 」 ケバブ。食べたことないからよく知らないけど肉をトルティーヤで巻いたものだ。美味しいんだろうなぁ…… 「もうちょっと映えるやつやりたかったんだけどさぁ、多数決でケバブがいいって 」 「でも肉うめーじゃん 」 「それはそう。ていうか朝倉くんクラス委員じゃないの?これ来てるの全部クラス委員だけど 」 「えっ、製作班の班長が行くって聞いたんですけど……」 そう答えるとなんだか微妙な雰囲気になった……。「押し付けられたか……」とか聞こえた気がする。 「可哀想だけどうちもここ使いたいしなー。朝倉くん、なんか特技とかある?」 「えーと……写真撮るのが上手いです 」 これとか、とさっき撮った写真を場所の取り合いをしている先輩に見せた。 「こっちが片桐先輩の自撮りで、こっちがおれの撮ったやつです 」 ……と説明すると、その先輩はこちらの顔と写真を交互に見た。 「……あのさ、場所譲るからこの写真全部貰えない?」 「えっ、いいんですか?」 「ちょっとキツめの交渉しようかなって思ったんだけど……これくれるならまあいいかなって……」 どう?と聞かれたため、エアドロで写真を送った。そんなに価値のある写真だろうかと思ったが、そういや片桐先輩顔はいいからなぁ……なんて考えた。自分も自撮りの研究でそれなりに撮影の腕はあるつもりだし。 「んじゃ議長、そこの場所書いといてよ。クラスどこ?」 「1-1です 」 可愛がってくれる先輩が増えたため、スムーズに場所取りすることができた。 余談だがその先輩は会議中ずっとおれに絡んできて、少々鬱陶しかった……。 + 会議が終わって教室から出ると、片桐先輩が廊下に立っていた。おれの荷物も近くにある……。 「お疲れ。帰ろうぜ 」 「待たなくてよかったのに 」 「一緒に帰りたかったんだよ。こないだみたいなことだってあるかもしれないだろ 」 「そうそう無いですよ 」 荷物を持とうとしたが「いいから」と持たれた。確かにまだ骨折れてるけど、大丈夫なのに…… 「次病院いつだっけ?」 「来週の火曜です 」 「そっか。俺も行こうか?」 「なんでですか 」 あの件以降先輩が過保護気味になってる気がする。一人で大丈夫なのにと思いながら雑談をしつつ、二人で靴箱へ向かった。

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