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第23話
楽しい冬休みを終えた後は、そう!課題テストが待っている……。
「は!?お前課題なんもやってねえの!?」と冬休み最終日に片桐先輩に驚かれたおれは、その最終日に課題全てを終わらせて一夜漬けでテストに挑むこととなった。いつもより点数が低い予感しかしない……。
「お疲れ様でーす……」
「おーお疲れ 」
放課後。いつものように空き教室に集合し、おしゃべりを開始する。やっぱり冬場だからかエアコンのついてない教室は寒くて、吐く息が白く染まった。
「ん 」
「はーい 」
腕を広げられたため向かい合う形に座る。こっちの方が引っ付く範囲も増えて温かいし、片桐先輩も頭を撫でやすいらしい。それに抱き合うと幸せな気分になる。
「テスト中ちゃんと起きてたか?」
「起きてましたよ。おれちゃんと家で寝ましたから 」
「でもお前数学の時も寝るんだろ 」
「……だって何もわからないから……」
何もわからないからといって寝ていい理由にはならないのは理解しているが……それでもあの先生の話し方はゆっくりで、陽光の気持ちいい時間帯や腹の膨れた午後には眠くなってしまうんだ。
「そういやこの学校な、二年で修学旅行なんだよ。三年だと受験で忙しくなるから 」
「ふーん……」
「だから来週の頭から一週間会えなくなるんだよな…… 」
「そうですか 」
「反応冷たくね?」
「え、だっておれに関係ないことですし…… 」
そう告げると片桐先輩はムッとして、やけに不満そうな顔になった。『寂しい』とか言ってほしかったのだろうか。
「せんぱ……んむっ…… 」
チュッと音を立てて口が離れ、また重なる。頭を離そうとしても片手で後頭部を押さえられて離しきれない。目を閉じて、軽く口を開けて舌を受け入れればいつものように頭の中がゾワゾワする。
「ん、んんっ……っは、んむっ……」
「ん…っ……だから、出発までいっぱいキスしたい 」
「……まだ、一週間ありますよ 」
「わかってる。でもいいだろ、何回したって 」
「もー……」
唇を吸い、舌が触れ合ってくぐもった声が口から出る。一度ラインを超えてしまうとその先に進むのも簡単なようで、キスの合間に腰を撫でたり、服に手が入って肌を撫でた。
「こら…… 」
「ん……駄目?」
「駄目。学校ですよここ 」
「俺学校でもしてたんだけどなぁ 」
「カスじゃん……」
キスは中断され、ぎゅっと抱きしめられる。はー……とため息をついてそのまま抱き締め返すと頭を撫でられた。
「うち来いよ、今日 」
「……ん 」
片桐先輩の家に行ったらすることを考えて、少し顔が熱くなる。抱きついたまま顔を先輩の首に埋めると、トントンと背中を軽く叩かれた。
+
「おれ明日体育あるんですけど 」
終わった後、片桐先輩に背を向けて文句を言ってみた。このぐったりするほどの疲れを残したまま体育に挑むのかと考え嫌になってきたのだ。
「俺も体育あるわ。春樹のクラス何やんの?」
「さぁ。バスケかなんかやるんじゃないですか?」
「なんかやる前にマラソンあるから頑張れよ 」
「えっ……」
何故そんなことをするのか……。寒い外で長距離を走らされるのがあまりにも嫌で、理解したくなさすぎて絶句してしまった。
「走んの嫌だよなぁ。中学の頃って持久走とかあった?」
「……覚えてないです 」
「そっか 」
後ろから抱きしめてくる温度が心地よい。全くわからない中学のことなんて考えたくなくて、その温度をもっと感じたくて片桐先輩の方に体を向けた。
「ん?なーに?」
まるで猫に構うような声で頭を撫でられ何故か気持ちが嬉しくなる。どんどん一緒にいたいという気持ちが出てきて、気付けば口から『離れないで』と言ってしまいそうになる。
「片桐先輩 」
もう認めてしまってもいいのかもしれない。同性同士なんておかしいはずなのに、この気持ちを止められそうにない。
「…………どうした?」
……それでも、『好きです』という言葉が喉の奥で止まって口から出てこない。
「おれお腹減りました 」
「あー……もういい時間だしな。なんかデリバリーする?」
「マックド食べたいです 」
「おっけ。クーポン探すわ 」
片桐先輩はおれから離れてスマホを触り始めた。
……まだいい。まだ言わなくてもいいんだ。確かに片桐先輩もおれのことが好きって言ってたけど、こちらから好きだと言うとすぐ冷めるかもしれない。付き合って関係が壊れるより今の関係が一番心地いい。だから……
「春樹アップルパイ食べる?それともチョコパイのがいい?」
「おれどっちも好きですよ 」
「んじゃ両方買って半分こな 」
まだ、このラインは超えなくてもいい。
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