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第8話 ふたりの、あけまして
大晦日、夜の境内。
年越し参拝の準備で、神社は静かにあわただしかった。
白装束に身を包んだレンは、
真剣な顔で境内を動き回っていた。
(やっぱり、かっこいいな……)
神主としての凛とした姿。
普段のレンとは違って、
でもそれも、ちゃんと“レンくん”だった。
「悠馬、来てくれてたんだ」
合間を縫って声をかけてくれた。
「うん。今日くらい顔見たいし」
「……でも、今日は忙しくて……あんまり、恋人らしいこと、できないかも」
少し申し訳なさそうに笑うレンに、俺は首を振る。
「それでもさ。
一番がんばってる姿、見られてるだけで、俺は嬉しいよ」
レンの目が少しだけ潤んだ気がした。
人の流れが少し落ち着いた午前0時。
境内の一角でふたり、そっと手を重ねた。
「……あけましておめでとう、レン」
「……俺も。
あけましておめでとう、悠馬」
その手の温度だけが、静かな夜に優しく灯っていた。
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