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第9話―番外編―
「ふたりきり、裏の境内で」
初詣の人波が落ち着いた午後。
「こっち、ちょっとだけ来て」
境内の裏手、石垣の影。
風の音と鳥の声しか聞こえない、小さな静寂の場所。
「……やっと、少しだけふたりになれた」
神主装束のままのレンが、俺の袖をつかむ。
その手には力がなくて、でも、
離したくなさそうに指がからむ。
「ずっと頑張ってたね。かっこよかったよ」
「……本当はね、途中で何回も、悠馬に触れたくなった」
レンの声がかすれる。
「でも、神主の顔してるときは、我慢しなきゃって――
……でも今は、ちょっとだけ……」
小さく肩にもたれてきたレンの髪から、
ふわりと香る、冷たい空気と、少しの温もり。
「悠馬、好き。……甘えても、いい?」
俺は何も言わず、
そっとその細い肩を抱き寄せた。
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