10 / 18
第10話 鬼も、君には敵わない
「鬼は〜外! 福は〜内!」
子どもたちの声が境内に響く。
神社での節分祭。
鬼祓いの祝詞を読み上げるレンは、
白装束に烏帽子で、いつもよりずっと神々しく見えた。
「今年もちゃんと、厄払いできたかな」
神事の後、境内裏で休んでいたレンがふっと微笑む。
「うん。お疲れ様、かっこよかったよ」
「……悠馬にだけ、ちょっと特別な豆まいてもいい?」
そう言って、俺の目の前で
小さな袋に入った豆をひと粒、そっと手に置いてくれた。
「福は、内」
ふたりきりの境内。
子どもたちの賑やかな声も遠く、
静かな午後に小さく響いたその声が、心に残る。
「悠馬には、ずっと福が来るよ。……だって俺が、そう祈ってるもん」
いつの間にか指が重なって、
そのまま、ふたりで豆を分け合って笑い合った。
「ねぇ、悠馬。
鬼って、たぶん――
君の前じゃ、逃げ出すと思うよ」
ともだちにシェアしよう!

