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第16話 春、ふたり咲く

境内の桜が静かに咲き始めたころ、 今日はふたりきりの特別なお花見。 白い桜の花びらがレンの髪にふわりと落ちて、 「……ついてるよ」とそっと指で取ってやる。 お弁当のひと口を差し出して、「あーん」って笑い合う空気は、 もはや友達以上、でもどこかまだ踏み出していない。 「こんなふうに、また春を迎えられて嬉しい」 そう言ったレンの横顔は、去年より少しだけ大人びて見えた。

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