16 / 45
第15話 "ルカ"再任務
十九歳になったエリスは、少尉として昇進したばかり。執務室での仕事も増えつつあった。
ある日、上層部からの呼び出しを受け、潜入任務の命を受ける。
「対象は、未成年者の不法売買、さらに隷属下での拷問の疑いがある。現場に潜入し、その証拠を確保しろ。回収完了後は対象の処分を許可する」
エリスは渡された任務資料に目を落とすと、そこに記された名前に目を疑った。
──ゲンゼル・ペイル
六年前、初任務であった若き“ルカ”に全てを奪われた男。
表向きは大手軍需企業の幹部。だが裏では政治家とつながり、武器の横流しや外国への密売をしていた人物。あの時、地位も財産も信用も全て失い、軍の手に落ちたはずだった。
逮捕されたはずのゲンゼルは、ある日突然釈放されたようだ。おそらく背後に関わる何者かの手助けだろう。
「…また、“ルカ”が必要になるのか」
そう呟き、薄く笑った。だが、資料を掴むその手には、無意識のうちに力がこもっていた。
ともだちにシェアしよう!

