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第35話 愛してる、ずっと
グラントはぐったりと力の抜けたエリスの身体を抱きかかえる。そのまま足取りは、まっすぐ自室の寝室へ向かう。
白く華奢な体は彼の腕の中で軽く、それでもじんわりと熱を帯びていて──
(……発情期 だ)
エリスの身体からは甘く熱を含んだ香りが溢れていた。それを感じるたび、グラントの奥底も、焼けるように疼く。
「……もう離さない」
そう呟いて、閉じ込める腕に少し力が籠る。
*
ベッドにそっとエリスを下ろすと、エリスは微かにまぶたを開いた。頬が赤く、呼吸は浅く乱れている。
「なんで……皇女様は……?…キス、したんじゃ…」
かすれる声で、問いが漏れた。
グラントはその問いに、小さく鼻を鳴らしながら、エリスの上着に手をかける。
「断った。最初からそのつもりはない」
一枚、一枚、と布が滑るように床へ落ちる。
シャツのボタンに指をかけながら、低く続ける。
「……お前が用意するから、付き合ってやっただけだ。
俺には、お前しかありえないのに」
その言葉に、エリスの身体がピクリと反応した。堰を切ったように、甘く濃厚なフェロモンが空間を満たす。
「それって……」
目を潤ませながら見つめるエリスに、グラントは顔を近づけ、唸るように囁いた。
「お前が好きだ。愛してる、ずっと。出会った時から」
目を丸くして、一瞬呆然としたエリス。
でもすぐに、涙があふれ、笑顔ににじんで──
「グラント……!」
そのまま、二人は熱く唇を重ね合った。何度も、何度も、溶け合うように深く。
甘い痺れに、頭がぼうっと霞がかったところで、グラントの分厚い舌がぬるりと入ってくる。
「んんっ…」
くちゅくちゅと湿った音が部屋に響く。
エリスの控えめな舌を絡めとると、じゅっと強く吸う。
「ぁっ…!」
エリスの肩がびくっと跳ねる。その刺激で腹の奥がじん…と熱くなる。
キスの合間に、グラントはエリスの額、瞼、頬、首筋、鎖骨……あらゆるところに優しくキスを落としていく。自身のシャツも脱ぎながら、肌と肌が触れ合うたび、香りが交じり合い、熱が重なる。
「ん、ふ…ぅ……っ」
エリスはキスにいっぱいいっぱいになりながら、ふと、喉を震わせて呟いた。
「僕……いつも素直じゃなくて……可愛げのない僕なんて、グラント嫌なんじゃないかって、思ってた……。
でも、っ、ぁ……ずっと…グラントの一番になりたかった……僕を、見て欲しかった……」
こぼれる涙に、グラントはたまらずエリスを抱きしめる。
「……可愛すぎんだろ、ばか……」
首筋にそっと唇を落とす。エリスの香りが、もう理性を溶かしそうなほど濃密だった。
「国を大事にして、人のために動けて、真面目で優しくて……俺は全部、わかってる。
……素直じゃないのは…俺だけ、だってことも」
そして、もう一度、確かめるように抱きしめる。
「そんなお前が、可愛くて仕方なかったよ、エリス」
その瞬間、エリスの瞳が大きく見開かれ、喜びが全身に満ちる。フェロモンはますます濃く、熱を孕み、アルファを魅了する。
「……グラント、グラント……」
呼ぶ声が震えて、愛しさが溢れて、二人はもう、お互い以外見えなくなっていた。
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