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第36話 愛しさと本能がひとつになる夜
エリスの白い肌に、グラントの唇がそっと触れるたび、甘い息が漏れる。頬に、喉元に、胸元に。唇が落ちるたび、エリスの身体がわずかに震える。
ツンと尖ったピンクに染まった胸の先。艶めかしく主張するそこをグラントはじゅっと吸い付いた。
「ぁあ…!あっ、んっ…グラント……」
もう片方は、指先で優しく撫で、いたずらに摘む。敏感に反応する初々しい反応を見て、グラントの瞳がゆっくりと細まっていく。
──そのとき。
快感を逃がそうとかぶりを振ったエリスの髪から、微かに鼻先を掠めた、スミレの香り。
レオンの、他のアルファのフェロモン。
グラントの手が一瞬止まる。
その瞳の奥に、獣のような本能がじり、と火を点けた。
(他の男の匂いを、つけるなよ……)
「……ほら。俺の匂いだけ、感じてろ」
低く唸るように囁いた瞬間、グラントの体から濃いフェロモンが一気に放たれた。百合のような上品さの奥に、ピリッと刺激のあるスパイシーな香りな、空間を満たしていく。
エリスはビクビクっと小さく震え、頬を赤らめながら、うわ言のように蕩けた声を漏らす。
「っ……あ、グラントの匂い……すき……すき…っ、すき……」
「……んとに、お前は……」
グラントは苦笑のように呟いたが、その声にはすでに理性の余裕などなかった。
エリスの髪を撫で、額に唇を落とし、名を呼ぶ。
「……エリス」
グラントはエリスのまろい双丘へ手を滑らせる。そこはすでに愛液でぐっしょりと濡れていた。そしてゆっくりと濡れそぼった後孔に中指を押し入れる。
「あっ、ん、…は、ぁっ……」
くち、くちと出し入れするにつれ、キツく閉じられたエリスの中が少しづつ解け始める。
入り口から浅い部分にあるぷっくりと硬くなったしこりを優しく押し上げると、エリスの屹立からとろ…と白濁が溢れた。エリスは細い腰をくねらせ、目尻に涙を浮かべて悦がった。
「ここ、気持ちいいか?」
「ぅん…いい……ぁ、ぁっ、んんっ……きもち、いい…」
ぬかるむ蜜孔を愛撫していると、いつの間にか二本、三本と指が増えていた。
むっちり肉厚な内側に指を根元まで入れて、たぷたぷと優しく肉壁を揺らせば、白い内腿をビクビクと痙攣させる。
「ぁ、ぁ、だめ……そこっ………イ、く……イっちゃ、う…」
「そのままイけ」
「ぁぁ、ぁうっ………ん、ぅぅっ……」
エリスは眉を寄せ、背を反らせた。つま先をぎゅっと丸め、息を詰まらせて震えるエリスに、グラントは鳩尾が思い切り握りつぶされたように興奮する。
エリスはそっと目を開け、潤んだ瞳でまっすぐ彼を見つめた。
「……グラント…も、なか、きて……」
愛しい願いに、グラントは深く息を吐き、額を合わせる。
「……痛かったら言えよ」
いたわる言葉をかけ、ぬぽ、と指を引き抜くと、代わりに熱く滾った雄を宛てがい、ゆっくりと中に埋め込んでいった。
エリスの内側は愛液でとろとろにぬかるみ、柔らかくむっちりした熱い肉壁が甘えるようにグラント絡みついてくる。
「…くっ……」
思わず声が漏れるグラント。
ぴったりと重なり合う身体。
熱が、想いが、ぴったりと合わさって、エリスの瞳から涙が零れた。
「……うれしい……グラントと、ひとつになれて……」
グラントはその顔を見て、たまらず微笑む。
「俺も嬉しいよ……エリス。お前の笑った顔が、好きだ…ずっと俺にだけ、向けてほしかった」
グラントを受け入れたそこが、誘うように収縮し始めたのを感じると、ゆっくり律動する。
「あぁぁ…!……あっ、ん、ンーッ……んぁっ…!」
突き上げる腰に合わせるように、エリスのフェロモンが押し出され、香りがさらに部屋中を満たしていく。
エリスはグラントの背中に必死に縋り付き、グラントから与えられる快感を必死に受け入れる。
「あ、あ、ぁ、グラント……グラント……っ、もっ、イっちゃう…もう………イッ、ちゃう……!」
息も絶え絶えに甘えるエリスを、グラントはぎゅっと抱きしめる。
「いいよ。エリス……大丈夫だ。何度でも、抱いてやる」
「んんっ……イ、ぅぅ…っ〜〜…!!」
エリスはガクガクと全身を大きく波打たせ、甘い絶頂を迎えた。グラントはその蠕動につられるように、腰に甘い痺れが込み上げる。
「っわるい、エリス…あと少しだけ、付き合ってくれ」
両手で収まるほどの細い腰をがっしりと掴み、激しく揺さぶる。
「あ、あッ゙…!っ、うそ……ま、た…ッ、んぅ〜…!」
「…エリス……っ…」
絶頂したばかりで敏感な蜜孔を容赦なく擦り上げられ、再び絶頂へと導かれるエリス。そしてグラントも、無垢な最奥にめがけて腰を突き上げ、熱を吐き出した。
何度も、深く、ふたりは愛を確かめ合った。
夜は静かに更けていく。
ただ、熱と甘い香りだけが、重なったふたりを包み込んでいた。
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