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再会
満足そうな視線を浮かべる仁都から、逃げるように水を一口飲む。
その瞬間、テーブルへ置かれていた仁都のスマホが激しく震えた。
一度では終わらない。
立て続けに、鳴り続ける通知。
画面には〝マネージャー〟の文字。
澪が眉を寄せる横で、仁都は露骨に嫌そうな顔をする。
「……出ないのか」
「だるい」
何度も鳴り響く着信音に、仁都は深くため息を吐きながらようやく通話を取った。
「ういーす」
『お前今どこだ』
電話越しでも聞こえるほどの怒鳴り声。
仁都はスマホを耳から少し離し、鬱陶しそうに顔をしかめる。
「うるさ」
『何度言ったらわかる?ライブ終わりに消えるなと言ってるだろ』
「帰る途中〜」
『いる場所すぐ送ってこい、迎えに行く』
通話は一方的に切れた。
ソファへ倒れ込むように、寄りかかる。
「帰れ」
澪が冷たく言うと、顔だけこちらへ向けた。
「やだ」
「やっぱガキだな」
「一緒に飯食って、家まで送って」
「無理」
「じゃあ帰らない」
悪びれた様子は一切ない。
澪は深く息を吐き、額を押さえる。
本当に面倒な男だ。
「……飯食ったら帰れ」
その一言で仁都の顔がパッと明るくなる。
「やっさし〜」
「帰ってもらわないと俺が困る」
振り回されるがまま、二人は近くの店で夕食を済ませた。
時折、軽口を叩きながらもどこか疲れているのがわかる。
食事を終えたあと、再び車を走らせた。
窓の外には、高層マンション。
「ここ」
仁都が指さした先で、車を止めた。
エントランスには一人の男が、スーツ姿で立っている。
腕を組んだまま、明らかに機嫌が悪そうだった。
車をおりた仁都は「うわ」と小さく呟く。
男はまっすぐこちらへ歩いてきた。
「お前なに考えて――」
怒鳴りかけた声が、不意に止まる。
男の視線は、運転席の澪へ向いた。
空気が変わり、数秒の沈黙。
そのあと、男が静かに目を細めた。
「……なんでお前がいんの」
聞き覚えのある声だった。
澪の眉が僅かに動く。
「俺のセリフなんだが」
仁都が「え?」と間の抜けた声を漏らす。
車内へ落ちた妙な沈黙。
男はゆっくりと口を開いた。
「なんでお前らが一緒にいる」
仁都は助手席へ腕を預けたまま、二人を交互に見ている。
「え?なにその反応」
二人は答えない。
男の鋭い視線は澪を見つめたまま。
「なになに、知り合い?」
軽い口調。
だが、空気だけが妙に張り詰めている。
男は小さく舌打ちすると、疲れたように額を押さえた。
「……仁都。この男とは今後一切関わるな」
男の鋭い視線は澪を捉えている。
「俺もそうしてくれた方が助かる」
ハンドルに寄りかかるように、頬杖をつきながら澪は低く吐き捨てた。
その中で澪だけが静かに笑っていた。
どこか、不気味なほどに。
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