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反省
柴田にマンション前まで送ってもらい、軽く礼だけを告げて別れた。
部屋へ戻る頃には、酔いも少しだけ落ち着いていた。
スーツを脱ぎ捨てるようにソファへ腰を下ろすと、深く息を吐く。
数秒だけぼんやり天井を見上げたあと、スマホを手に取る。
《今日はありがとうございました》
《ご迷惑おかけしてすみません》
必要最低限の謝罪だけを打ち込み、そのまま送信する。
すると、返事はすぐ来た。
《いえいえ。また飲みましょう》
それを数秒だけ見つめたあと、スマホをソファへ放り投げる。
「……飲みすぎた」
低く呟き、ネクタイを緩める。
そうしていると、不意に震えるスマホ。
画面に表示された名前は、美波仁都。
数秒だけ無視を考えたあと、結局通話を取った。
「なに」
『柴田ちゃんと一緒かなって思って』
「一緒だと思うなら普通は気使うだろ」
『俺は逆だね』
どこか楽しそうな声に、小さく舌打ちを返す。
「意味がわからん」
『えーわかんない?俺が他の人と一緒にいたら何も思わない?』
「どうでもいい」
即答の返事。
数秒、通話越しが静かになる。
その沈黙を気にすることもなく、ソファへ深く体を預けた。
『いまひとり?』
「ひとりじゃなきゃ、とっくに切ってる」
『用がないのに切らないんだ』
静かな部屋に嬉しそうな声が響く。
その声を打ち消すように息を吐く。
「……痛くなかったか」
『なにが?』
「髪」
短く返すと、静かになる通話越し。
『何に対して謝ってんの』
「痛かったろ」
そう言うと、数秒の沈黙が続く。
『悪いと思ってんの』
「ああ」
澪の言葉に、仁都は深く息を吐いた。
『すごい楽しそうだったけどね』
この言葉にすぐ、反応ができず、ただ眉を寄せる。
『違う?』
追い打ちをかけるような返事。
煙草に火をつけ髪をかきあげると、静かに煙を吐く。
紫煙が、静かな部屋へゆっくり広がっていく。
「しらん」
誤魔化すような返事。
だが、仁都はすぐに小さく笑う。
『ビンゴ?』
「……ほんと面倒だなお前」
煙草を咥え直しながら、眉間を押さえる。
自分でも感じていたことを、見透かしたみたいに静かに笑う仁都が、鬱陶しく感じた。
『ゾクゾクしたから食わせてって言ったじゃん!』
「気持ち悪い」
『えー、うちのマネージャーには食わせたのに?』
その言葉に、少し反応を見せる。
「覚えてない」
元恋人だという話をした覚えはない。
それでも面白がるようにその話題へと触れてくる。
「昔の話はよせ。それとお前には関係ない」
冷たく返すと、鼻で笑いながら『ふーん』と返ってくる。
やがて仁都の声が少しずつ緩くなっていく。
煙草を灰皿へ、押し付けると小さく息を吐く。
「ねろ。切る」
仁都の返事も待たないまま、通話を切った。
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