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調子が狂う

翌朝。 目覚ましがなる前に目が覚めた。 シャワーを浴び、スーツへ袖を通す。 コーヒーを流し込むように飲み干すと、そのまま家を出た。 昨夜のことは頭の隅へ追いやって。 会社へ着くと、フロアがやけに騒がしかった。 女性社員たちがスマホを囲みながら盛り上がっている。 「やばいって!」 「とうとう撮られたか〜」 「今まで週刊誌に撮られてないのが奇跡だよね」 そんな声が飛び交う中、自席へ向かうと女性社員たちが次々にこちらへと集まってきた。 「一ノ瀬さん!!!!」 「なに」 女性社員のひとりが勢いよく、スマホを突き出してきた。 画面には芸能ニュース。 【人気アイドル・美波仁都、美女との深夜デートをスクープ】 見慣れた顔に、小さく眉を寄せる。 「見ました!?」 「興味ない」 「朝からずっと話題なんですよ!!!」 記事には帽子を被った仁都と、隣を歩く若い女性の写真。 腕こそ組んでいないが、誰が見ても親しい関係に見える。 「でもまあ噂では遊んでるとか言われてたしね」 「うんうん」 「まあモテるだろうな〜」 女性社員たちは楽しそうに笑っている。 「この女の人モデルかな?」 「インフルエンサー?」 「女優?」 澪はその盛り上がりに呆れたように、鞄を机へ置きながら小さく息を吐く。 すると一人がふと思い出したように顔を上げた。 「一ノ瀬さん、仁都のお知り合いでしょ?何か知らないんですか?」 「しらん」 「知っててくださいよ!」 「他人の恋愛なんて、何が面白いんだ」 呆れたように返すと、女性社員たちの視線が一気にこちらへと向く。 「面白いでしょ!!!!!!」 「国民的のアイドルのスキャンダルなんて!!」 「そうだそうだ!!!」 次々と飛んでくる声に、無視するようにパソコンの電源へと手を伸ばす。 「もっと人に興味持ってくださいよ!」 「だからモテないんですよ」 「余計なお世話だ」 そう返すと、周囲から笑い声が上がる。 楽しそうな声が飛び交う中、澪だけが黙ったままキーボードへ指を置いた。 ふと視界の端に、先程の写真が浮かぶ。 「……っ」 何も思わない。 そう思っていたはずなのに、なぜか調子が狂う。 確かにここ最近は、毎日来ていたはずのLINEが途切れていた。 初めこそは、面倒な思いをしなくてよくなると思っていた。 それなのにパタンと途切れた連絡に、無意識にスマホへ目を向ける自分がいた。 小さく舌打ちをすると、スマホを引き出しへ放り込む。 「……鬱陶しい」 誰に言うでもなく呟いた。 だがその直後、引き出しへ放り込んだスマホが小さく震えた。

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