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イライラ
震えるスマホに、反射的に画面へ視線を向ける。
ほんの一瞬。自分でも気付かないほどの動きだった。
だが、表示された名前を見た瞬間ひそかに眉が寄る。
柴田からのLINEだった。
《ネットニュース見ました》
続けてもう一件。
《彼、大丈夫です?》
その画面を数秒見つめる。
《俺には関係ないので知りません》
すぐつく既読。
《心配じゃないんですか》
指が止まる。その言葉になぜか少し苛立った。
《自業自得です》
《そういうことにしときます》
その一文に、露骨そうに嫌な顔をする。
どいつこいつも何かあれば〝美波仁都〟を出してくる。
それが無性に腹が立った。
スマホを机へ置くと、深く息を吐く。
仕事に戻ろうと資料へ視線を落とす。
だが、数行読んだところで指が止まった。
自分が今、何に対して苛立っているのかがわからなかった。
無意識に眉間を押さえる。
そして数秒後、諦めたように置いたスマホを手に取った。
連絡が途絶えたままのトーク画面だった。
最後に送られてきたどうでもいいスタンプが、表示されている。
小さく舌打ちをし、画面を閉じようとした時、画面の下に新しいメッセージが現れる。
《澪》
トーク画面を開いたままだったせいで、すぐついた既読にすぐさま反応を見せる。
《え?》
《開いてた?》
《俺のこと好きになった?》
立て続けのメッセージに眉間に皺が寄る。
そのままいつものようにスルーしようと思ったが、無意識にキーボードへ指を当てていた。
《勘違いするな》
たった一言。
《どうせネットニュース見たんでしょ》
《見てない》
《仕事終わり迎えに行くから会社の下で待ってて》
その一文に、指が止まる。
数秒、画面を見つめそしてすぐに打ち込んだ。
《来るな》
いつもと変わらない返事だった。
《17時には終わるっしょ。逃げんなよ》
話を聞く気がないような態度に、思わず舌打ちが漏れる。
ふざけるなと思いながらも、なぜか頭の片隅では仕事終わりの時間を計算している自分がいた。
その時、ふと浮かんだのはあの男――黒田海星の言葉。
――あまり人を振り回すな。
「……うるせえ」
逃げるようにスマホから視線を外した。
どっちが振り回されているのか。そう思う自分にも苛立ちが募っていく。
乱暴に資料を引き寄せると、無理やり意識を仕事へと向けた。
苛立ちをぶつけるように、キーボードを叩く音も強くなる。
カタカタと響く音に、近くの社員が一瞬だけこちらを見たことも気付かないまま、この感情を消すように仕事をこなしていく。
頭の片隅でずっと繰り返されている言葉が酷く鬱陶しい。
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