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第13話
って、僕は…
何で、土屋に声掛けようとか思っての?
これじゃ…周りのヤツらと同じじゃん。
僕は、土屋の弱みを知りたいだけだし…
カラカラッと音を立てて土屋は、空き教室の中に入っていったらしい。
土屋は、昼を食べない事の方が多くて、よくお茶のペットボトルだけをもって三号棟に現れる事が多い。
たまに食べることがあるみたいたけど、おにぎり一個とか菓子パン一個と少食に近い。
僕も、食べないの方が多いけど土屋の方が、少食なのかなぁ?
そんな中途半端なかんじでか、昼寝とか出来るの?
もしかしたら居眠りは、この窓辺のポカポカした気温のせいだったりして?
なんか、分かるような気もしなくもない。
空き教室の扉に付いている小窓から昼寝をしている土屋を、確認できたのは最初の日と二週間の二回だけだ。
その時も、バレるか、バレないか、ドキドキしながら土屋に近づいた。
いつも真面目で堅い土屋の隙だらけな姿とか、僕だけが知っているんじゃないかって…
そう思えるだけで他の誰よりも、濃い優越感に浸れて嬉しかった。
今じゃこのハラハラする時間が、面白くて仕方がない。
物陰に隠れながらスマホで適当にゲームとかやって、昼休みを過ごした。
予鈴も本鈴にも、この時だけは珍しく聞き耳を立てる。
いつも通りなら土屋は、仕事をしているはずだ…
そーっと、扉の横に立つ。
横目を使って室内を見ると、机に向かっている時間帯のはずなのに土屋の姿が、見当たらなかった。
ペットボトルのお茶に裏返しに伏せられた書類。
使い込まれた風の水色のボールペン。
もしかして…
今日は、もう寝てるとか?
緊張しながらも、静かに扉を開く室内は、誰も居ないんじゃないかってくらいシーンとしていて無音なのが、逆に怖いぐらいだった。
頭から爪先にかけて、ドキッンと脈打つ心臓の音の方が高いような気がして…
恐る恐る足音を、立てないように窓際の机に近づいた。
誰も居ないみたいな雰囲気に、少し怖くなり机に手を付いていた拍子に側に置いてあった水色のボールペンを、手に取っていた。
教室でメモを取る時にも、職員室では書類をチェックするのに使っている水色のボールペン。
書きやすいのかな?
それともお気に入り?
今ってボールペンのインクだけでも、バラ売りしてるし交換して使ってるのかも…
なんて呑気に思い浮かべながら土屋が、いつも眠っているはずの窓際の方へと視線を移すが、そこに土屋の姿は無かった。
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