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第14話

 アレ?  えっと、  「…そこで、何してる?」  重くて冷たい声が、僕の耳へと響く。  ビクリッと、波打つ肩が震えた。  振り返ると土屋が、扉を閉じて部屋に入って来る所で…  「いや…あの…」  近付いてくる土屋のハッキリと見開かれた目に僕の顔が、写し込む。  咄嗟に持っていた土屋の水色のペンを、上着のポケットに入れてしまった。  「…えっと…誰か、居るのかなってとか?…」  自分でも、アホみたいな言い訳に聞こえて笑いそうになった。  「書類、見りゃ分かるだろ…」  どうしようかと藍田は、身震いでもするかのように身構えた。  見つかるかも知れないとは、思っていたが、今日に限って見付かるとは、考えもしてなかった。  「えっと…」  言い訳が、全く浮かんでこない。  「今、授業中だろ?」  「あの…その…き…気分が、悪いから次の授業から早退しようかって…だ…だから…」  土屋は、オドオドする藍田の隣に並ぶと平然と立ち止まった。  「平気でサボって、学校からも居なくなるくせに? 今更だろ?」  言っている事とは、日頃の行いと態度で笑い話にもならない。  いい加減過ぎて、ますます笑えなくなる。  「早退するのは、構わない。でも何で、俺がここに居るって知ってる?」  「えっ…それは、職員室で、聞いたから……」  そんな言葉に土屋は、口角を上げるようにニッと口元を歪めた。  それを見せ付けられた藍田は、たじろぎながらゴクリと息を飲み込む仕草を見せる。  「俺も、今…職員室から来たんだけど…お前、居なかっただろ?」  「………………」  「それにお前…ここ一ヶ月程水曜日のこの時間帯…教室に居ないらしいな?」  土屋の言葉は、全部を知っているかのような口振りだ。  水曜日のこの時間帯。  藍田が、こっそりと何度もここに来ている事を…  「知ってて、言ってるの?」  藍田の目は、酷く怯えていた。

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