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第15話
その目からは、感じるものは、
人を疑う事しかできない目なんだと直ぐに分かった。
別に、哀れむわけじゃない…
俺の横に並んで、ビクつきながら見上げてくる藍田の目は、まるで怒りに満ちていくようだった。
「土屋が、たまに…サボってたから…」
淡々と業務をこなすように、書類をまとめ出しっぱなしの筆記類にタブレット一式を手に持った。
「で?」自分でも物驚くほど、感情を感じられない冷めた声だったと思った。
見下ろすと藍田は、また萎縮するように小さく肩を丸めている。
大人を信用してない。
頼らない。
苦手。
煙たがると、聞かされていたが…
嫌いってよりは、大人が怖いのか?
藍田のそれは、普段から暴力や暴言を振るわれている子供の仕草そのもので、学校での生意気そうな藍田の姿とは、かけ離れすぎているのか、どうしても目に映る姿を見比べてしまっていた。
「いや…だからの…その…」
今ここにいるのは、ただの怯えきった子供だ。
その姿は、まるであの頃の自分達だった…
どこにいても、怯えて生きていくしかできなくて…
身を寄せ合うみたいに、一緒に居るしかできなかったあの頃のを自分達が、居るような錯覚を起こしかける。
「あの…」
ここまで怯えられると、こっちの話しなんざ聞く耳を持たないか…
俺は、藍田を落ち着かせるために見るのを止めた。
すると藍田は、少しホッとしたのか言葉の抑揚が、若干戻ってきたらしく…
「壁に寄り掛かって、寝てるの見えてたから…」と、言葉を投げかけてきた。
まぁ…俺からすれば、なんの言い訳なのかと言うべきなんだろうが、変に大人な言葉を並べても藍田には何も響かないはずだ…
「そうか…でもまぁ…入って来ねぇーと、分かんねぇーはずだぞ…」
語気を強めたつもりはなかったが、藍田の気持ち的には、限界だったのかもしれない。
泣きそうな顔って言えばいいのか、藍田は挙動不審な表情を俺に向けてくる。
「…気になったから見にきてた。悪い?」
と、低く暗い声で真っ直ぐに向けられた心境の異様さを、ほんの少しだけ俺は、感じ取った「…そうか…」と、返事をしながら普段の藍田らしくない雰囲気に一瞬、俺も飲まれそうになったが、軽くいつもの事だと思うと、一気に冷静になれた。
「…あっ…」悲鳴に近い声を上げる藍田は、下を向く。
もしかしたら。
つい。いつもの癖で、無表情になっていたかもしれない。
藍田は、我に返ったように慌てて空き教室から出て行った。
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