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第16話
“ 気になったから見にきてた。悪い? ”
僕は、何を口走った?
逆に警戒させてどうする。
これじゃまるで、土屋が気になるって言ってるようなもんだろ?
いや…有り得ないから。
僕が大人を、気にするとか…
何ともあ思ってないし!
ってか、睨むなよ!!
ふざけんな!!
イライラして廊下の壁にヤツ当たるみたいに腕を打ち付け叩いた。
大きく乱れた息をそのままに僕は、ガラッと音を立てて自分のクラスの扉を開けた。
当然のように僕は、皆から注目されたけど…
今更、何とも思わなかった。
「おい。藍田…どうした? 顔…真っ青だぞ?」
中年の教科の先生に声を掛けられたけど、指摘された顔じゃ振り向く事も出来ないから下を向いたまま僕が、何も言えないでいると…
「藍田。どうしたん?」
「オ〜イ。朝陽くん? 」
立て続けに、周りから声を掛けられた。
「…ぇる…」
「へっ?」
「帰るの !!」涙ぐんだ声に聞こえたかもしれない。
ザワザワしていたクラス中が、シーンと静まった。
ヤバイ。泣きそう…
そんな僕にいち早く反応したのは、教科担当の先生だった。
「…藍田。土屋先生には、言ったか?」
取り敢えずコクリとだけ頷いて僕は、クラスを出た。
「……そんな感じで、藍田くんが、早退していきました」
俺が、次の時間に教室に入ってくると早々に日直の女子生徒が、駆け寄ってきた。
「先生には、言っていると」
心配げな女子生徒は、どう言葉にしたらいいのか? と訴えてくる。
「大丈夫。早退の事は、直接聞いてるし。家の方には、後で連絡とるつもりだから」
「分かりました…」
そう言って女子生徒は、席に戻っていった。
実際、前の教科担当から藍田が、急に帰ってしまった事や態度がおかしかったと聞かされていた。
俺も、少し大人気なかった大度をとった自覚している。
その日の放課後。
学校から藍田の家との距離を考えると、時間帯的にもう着いているだろうと、自宅に連絡を入れたが…
自宅の電話は、留守電になることもなく鳴り続けているだけだった。
藍田の緊急連絡先は、略家にいると言う母親の携帯番号と自宅になっている。
もう一度の意味で、今度は母親の携帯番号に掛けたが…
「土屋先生?」
職員室で、電話の受話器を握り締めたていた俺は、同僚に声を掛けられた。
「通じました?」
「えっ…まぁ…留守電でした…」
それは、嘘だ。
藍田の自宅は、相変わらず電話が鳴るだけ。
母親の携帯番号は、通じなかった。
最初に掛けた時は、番号を押し間違えて通じなかったのかとも思ったが…
書類に記された母親の携帯番号は、番号を変えたのか…
一度も通じなかった。
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