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第20話

 季節柄、日が暮れる速度は、異様に早くてあっと言う間に夜になってしまう。  木造作りでレトロでも言うのか、少し西洋風な医院の床は、飴色に磨かれ。  ドアノブや部屋入口にある診療室や受付けなど説明するネームプレートも年季が入っている。  改めてみると年代物の装飾品が、今もなお使われている事に驚きつつも、そのままそのレトロが、普通だと思っていた事にも驚いていた。  その当時は、どこの医院も病院も、こう言う所なんだと本気で思っていたから。  自分が、例の大ケガを負って市内の総合病院なんって所に入院する羽目になった時も、総合病院のガチのデカさに戸惑ったと言うか…  シュールにカルチャーショックのようなものを言う受けたていた。  それだけデカイ病気も、ケガも無く少しの風邪は、ここで処方された薬を貰って飲んだぐらいで、済んでいたのだから概ね健康体だったのだろう。  「取り敢えず。検査した所は…骨や内臓には問題はない。ただ打撲だが、かなり酷いな…」  「そっか…」  「けど…親に殴られたとか…お前じゃあるまし…」  「ここまで酷くは、なかったよ…」  そんな大昔の事、今更だと付け加えた。  「十年くらいしか、経ってねぇーぞ…」  医院の奥に増設されたレントゲン室やら検査室の方から顔を出した白衣の男は、藤里 秀哉と言い俺よりも四つ上で、この近所に住んでいた頃の兄貴分だった人だ。  「悪い…無理言って…」  「いや別に、今日は、まだやってる時間だから気にすんな。それにお前の事知らねぇ…訳じゃないからさ…」  気さくと言うか、人当たりの良さや職業柄医者と言うことも含めて、信用のおける人物だ。  ここ以外の病院に行ったら、知らぬ間に警察に通報されるのがオチだ。  「で…今、藍田は?」  「本人は、平気だと言っていたけど、痛みが酷そうだったから痛み止め飲んでもらって、落ち着いたのか眠ってる」  秀哉は、治療室のカーテンを僅かに開けてくれた。  先程よりも痛みが和らいだのか、静かに休んでいるようだが、ここに運び込んだ時から感じたように藍田が、どんなに苦しんでいようと、悔しい気持ちがあったとしてもだ。  本人が、それを声には表すことはないだろう。  おそらく道端で、フラフラ歩く藍田を見付けた時と同様に何でもないと、平然と答える。   それが、藍田の本心だから。

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