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第21話

 痛くても痛いとは、言わず。  寂しさや心細さを決して、誰にも悟られたくないはずだから…  本当の藍田は、自分を偽り不器用にも、そうやって生きて来たんだろう。  「なぁ…警察とかいいのか? 診断書も書けってなら。いつでも書くぞ…」  「…………」  俺は、歯切れ悪く言葉を濁した。  「もう一方の親に連絡して見るよ。ただ…俺と同じで、もう片方の親も……」  親も子も、家族に振り回される事には変わりはない。  そう気付くのに家族の存在が、邪魔をする。  子が子供なら家族が、居なければ生きていけない。  それは、物理的な当たり前の事だ。  ただ…  家族と言う一緒の枠でも、疎外感を持ちながら生きていく事は、非力な子供には、酷な話だ。  まぁ…それは、俺の見解。  藍田は、ずっと疎外感を家族に対して感じてきたのだろう。  どうして、そうまでして一人でいようとしているのか…  まるで…ヤツや俺のように。  「ホントお前ら似てる。お前も、家族に殴られて、うちのオヤジの所に何度も、担ぎ込まれてたからさ…まぁ…最後は見兼ねたオヤジが、警察に通報したけど…」  確かに、アレだけ殴られた上に階段から突き落とされそうになって、逃げ込んできたら。  通報されるわな…  「隠居暮らしのオヤジから代替わりした頃、当時のカルテを、見せてもらったけど…相当、お前ヤバかったぞ…よく骨折やら内臓やられなかったな…」  「中、高校の頃の話だろ?」  「関係ねぇーよ。なんか突っ掛かるモノとかねぇーのかよ?」  「ねぇーよ…それからも、色々あったしな…」  「…そう言えば、いつもの保湿剤無くなる頃じゃねぇーの? これから乾燥する季節だからな。多めに出しとくか?」  俺は、無意識に首元に手を当てた。  甦るのは、強烈な痛みでも、鮮明な記憶でもない。  ヤツの泣き叫ぶ声だ。

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