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第27話 居場所

 一ヶ月前のあの日。  いつものサボりのはずなのに珍しく三号棟になんって行かなきゃ…  あの土屋が、隠すぐらいの傷跡を見ずに済んだしオレが、興味を持つ事もなかったはずだ。  それが元で、母親に殴られることもなかった…  全部、自分が悪い。  オレ一人で、何引っかき回してんだよ…  悔しいのに、歯を食いしばることさえも出来ない。  泣いているって分かりきってるけど、泣いている所を見せたくなくて…  まどからの日差しが、眩しいみたいに手の甲を額に乗せた。  「本当…ごめん…」  やっと振り絞った言葉は、涙声で手の甲で隠したつもりが、意味なくて惨めに思えてきた。  「藍田。無理はするな…」  そう言って土屋は、冷たいタオルを差し出してきた。  「なに…こ…れ?」  「冷たいタオルだよ。顔を拭いたり冷やすのに使えばいいよ」  それを受け取るとオレは、少し広げて目元や腫れの引けない顔に軽く押し当てた。  ヒンヤリとした感触に痛みが、若干、和らいだ気がする。  「喉乾いたろ? お茶を持ってくるから…」  そう言うと土屋は、スッと部屋を離れていった。  ベッドと小さな折り畳み式のテーブル以外、何も置かれていない部屋は、殺風景と言えば殺風景で、薄いレース状のカーテンが、日除けも兼ねて閉められたままになっている。  「持ってきたぞ…」  そう言いながら入ってきた土屋は、コップとストローを乗せたトレイを、手に現れた。  「飲めそうなら起こすのを、手伝う…」  喉が、乾いていたからコクリと頷くと土屋は、オレを抱える様に起こしたが、自力で起きているのは無理だと思われたのか土屋は、咄嗟に近くあったクッションや枕を背中側に支えとして置いてくれた。  起こし方といい。  こう言う気配り? って言うの?  「なれ…てるの?…」    そんなオレの声に土屋は、苦笑う。    「慣れてるって訳じゃないよ…自分がされて良かった事をしているだけだから」    「そう…なの?」なんって、やっと出せる声量で、当たり障りなく答えたけど…   オレを支えてくれる土屋の腕が力強いのと、その温かさに思わずすがってしまいそうになるのは、弱っていて甘えたいから?  今の土屋なら甘えても、良いのかなぁ…って…    

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