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第36話
本を読むのは、声を掛けられないためだっが、それでも数日おきに読む本が変わっているのは、それなりに読んでいたからなのか…
「…ねぇ…土屋…明日…その…」
夕飯を食べながら藍田は、ためらいながら話をし始めた。
「国道沿いの大きい本屋に行ってもいい?」
「ん?」
「いや…休んでいるのに…ダメだよね?」
一人で話て終わらそうとする藍田に俺は、構わず話を続ける。
「読む本、なくなったか?」
「…まだ…だけど…土屋の読んでた本の中に続きの話しがあって…続きが気になって、本棚を見たけど無くて…」
「無い?」
「うん…棚の上の方に入り切らない本が積まれるでしょ? その中にも無くて…」
略、頭に入ってなくても、本屋で目に留まった二巻ぐらい続く文庫本なら抜けることなく揃ってるはずだが…
『これは…預かっておくね』
まさか…
あの時の?
「他のシリーズは、あるみたいなんだけど…本棚にはなくて…続きが、気になったから本屋に連絡したら新装版ならあるって言われて…」
要するにそれを、買いに行きたいと?
藍田の中では、学校を休んでいるのに買い物に行くのは、マズいと?
今までサボりの常習犯で、人騒がせばかりたしてきたなのに?
こう言うふうに藍田は、性格が変わったように静かになった。
元が、こう言う性格なのか、単にそう言うふうに装っているのかは、未だに分からない。
「ダメかな?」
「…まぁ…ずっと家にこもっているよりも、気晴らしになって良いんじゃないか? それに歩かないと体力が戻らないだろ?」
「良いの?」
「昼間。ゆっくりと散歩がてら行ってみると良いよ。お金は大丈夫か?」
「うん。それは大丈夫。ゆっくり歩いて行ってみる」
翌日の昼前にこれから出掛けると、メッセージが入った。
季節は、だいぶ寒くなってきている。
藍田の持ち合わせた服の中に、厚手の上着は見られなかった。
『クローゼットの中に厚手のフリースが入っているから着ていくと良いよ』と、メッセージを入れると…『了解』とだけメッセージが帰ってきた。
その日は、昼過ぎ頃から風が強くなり少し肌寒くなってきた。
それをみこうした生徒の多くが、カーディガンやパーカーを羽織って授業を受けていた。
まだ北風には早いが、日が陰るのが早くなる特有の季節からくる寒さかもしれない。
「では、お先に失礼します」
そう挨拶をしてから俺は、職員室を後にすると、真っ直ぐ駐車場へと向かった。
職員用の駐車場は、校舎の隣で裏門と隣接している。
俺は、スマホの通知バーを何気なく眺めた。
もしかしたら藍田から何か、メッセージが届いていないかを知るためと言うか…
「…………」
特に何も、無いみたいだな…
昼間のメッセージ以外には、何も届いてはいなかったが、学校の隣の駐車場に差し掛かった頃、藍田から連絡が来た。
『土屋…今、大丈夫?』
『…どうした?』
『今、学校だよね?』
『帰る所だ…駐車場に居る』
すると…
ガサガサと、近くの植え込みが小刻みに震えた。
ギョッとなった瞬間、頭に枯れ枝を乗せた藍田が、顔を出してきて弱々しく『ゴメン。来るつもりなかったんだけど…気付いたら来てた…』と、絞り出すような声がスマホから流れた。
『大丈夫か?』
ゆっくりと近付いて、頭に乗っかている枯れ枝を取り枯れ葉を落とすと、藍田は戸惑っているふうな表情を見せ下を向いた。
『一緒に帰るぞ』
『うん…』
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