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第43話
『薬は、均等に満遍なく塗ることな!』
そうやって、藤里医院の先生に軟膏の塗り方を教わった。
『なんで?』
『ムラがあると…ベタついたりして気持ちワリィからよ。適度に塗って広げるが、一番だ』
満遍なく丁寧に…
優しく塗り込む。
土屋が言うように、その背中は皮膚の色がまだらで薄い皮が、引っ張られて少し歪んでも見たりボコボコしているようにも思えた。
「…あの…痛くない?」
「はぁ?」
「いや…」
自分でも、何言ってんだよってなる。
「なぁ…気持ち悪いだろ?」
と、土屋は少し尖った口調で呟いた。
「そんなこと言ったらオレどうなるの? 知らない間に着替えさせられてたし…お風呂に入れないからって、身体拭いてもらったり。歩けないから抱っこでトイレとか…」
殴られた次の日は、全く動けなかった。
それでも喉は渇くしトイレにも、行きたくなる。
数分、悩んだ。
たかがトイレに数分。
恥じらっているものの限界はくるしで…
でも、喋れないしで…
『…うぅ…』物音立てるのもなんだけど…壁でも叩く?
いや。
お隣さんから苦情きそう…
『うぅ〜…』
ちょうど洗濯機を回すためにか、廊下に出た土屋がヒョイと顔を出しながら…
『どうした? うめき声なんって出して?』
『……』どう伝えれば?
あの時、オレ絶対モジモジしてたよな…
『?…もしかしてトイレか?』
その言葉にすがったわけじゃないけど、藁をもすがるとはこう言うことで…
おもおっきり頷いて文字通り抱っこで、トイレに連れて行ってもらった。
立つぐらいは、寄り掛かればいいしトイレは座れば、何とかなりそうだけど…
立てるか? とか思っていたら手摺が廊下やトイレに付いてある事に気付いた。
その時は、ナゼだろう? って思っていたけど…
今にして思えば、元々、土屋の祖父母さん達が住んでいたからその手摺は、その名残だったのかもしれない。
「土屋がさぁ…こう言うけが人の世話とか慣れてるのは、やっぱり自分の事があったから?」
「なんか前にも、似たようなこときいたなぁ…」
土屋の声は、低音で聞きやすく不思議なぐらいにスッと響いてくる。
「あのさぁ…」
「ん?」
「ありがとう。何回行ったって足らないね…」
「うん。どういたしまして…か?」
「どうだろ?」
傍から見たら。
オレと土屋って、ホントどう見えるんだろう?
自宅で世話になっている生徒が、お礼にと担任教師の背中に薬を塗るから服の裾を捲りあげてる…
変な構図で、面白味はないのに…
妙に落ち着いた感じなるは、不思議だ。
でもこれが学校だったら?
「………………」ドキッ。
あり得ないシュチュエーションだからこそ余計に、意識したみたいになった。
本当に、何考えてんだよ…
一方土屋は動じずで、つけたままのテレビを眺めたりと随分余裕な感じに思えた。
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