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第44話
広い背中に広がる火傷の跡は、赤紫色のまだらで、その背中は薄い皮が張ったような自然治癒したような場所と明らかに治療した跡が点在していて、熱さからくる火傷の跡と言う割には火傷跡っぽくないと、薬を塗り込む度に触れた皮膚から感じていた。
オレみたいにたまに殴られたとか、髪の毛を掴まれて引き摺られて出来た擦り傷跡は、見慣れているけど…
他人の傷跡なんって、初めて見るレベル。
でも何か、引っ掛かる。
あっ…
中学の頃。
アルコール消毒液のアレルギーの子が居て間違えてそれに触れて赤くなったり赤紫色になって大騒ぎになった事あったよな?
本人は、うっかりしてたってケロッとしてたけど…
薬品かぶれも少しあったらしいって後で分かったんだっけ?
あの時みたいだ…
「…土屋、もう少し塗る?」
「あっ、もう大丈夫だ。ありがとう助かった」
「うん。じゃオレ本読みながら寝るからおやすみ」
「読むのは、構わないが夜更かしすんなよ」
「ハイ」
ペコッと頭を下げリビングを後にしてから部屋に入りベッドに座り込む。
そう言えば、少し前に母親に顔を殴られて傷跡を隠すにはとか、スマホで検索した時に、どこかの動画サイトのチャンネルに行き着いて…
腕に出来た痛々しい傷跡に息を呑んだを覚えている。
どこだっけ? とオレは、前に試した通りにまた検索を掛けた。
スクロールしながら記憶を辿る。
行き着いた動画のチャンネルは、外国の事件や事後がどうして起きたか、その背景や現場に居合わせた人の証言なんかを細か紹介してくれていた。
その事件は、五年程前に外国で起こった通り魔によるもので、数人が腕や足に薬品を掛けられたと言うものだった。
その中の一人がインタビューにこたえてくれて自身の退院直後の腕の写真を紹介してくれていた。
『あの写真だ…』
土屋の傷跡は、これに近いような…
オレは、ゴロンとベッドに転がった。
確か土屋って、ずっと同じ市内に住んでるみたいな事いってたよな?
藤里医院の先生とも昔からの付き合いだったみたいな…
頭の先から足先まで、激しく鼓動が駆け回る。
震える指で…
何かを打とうとするが、何からどう打てばいいのか分からず。
落ち着けるように深く深呼吸した。
十年前だから『20××年』か? 次は…市の名前『◯◯市』『高校生』『事件』とまとまらない文を入力した。
目に飛び込んできた記事の見出しにオレは、言葉を失った。
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