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第37話
どうせ抱けない。須田の好きは、俺の好きとは違うから。
首にかけていた腕をとる。須田を解放した。
「ウソだよ。須田がうるさいから、からかっただーーッんむ!」
唇に吸い付かれた。唖然とする俺をグレイの瞳がみている。簡単にひらいたくちに舌が入りこむ。飲みこめなかった唾液がくちの端からこぼれた。
「や、だ、なに、なんで」
須田は俺を「好き」じゃない。抱けるワケない。須田は俺を友達だと思っている。ただの友達とセックスはできない。俺が女だったら、性欲処理のセックスができた。女の身体に興奮する性に翻弄される須田の精液をうけとめられた。
俺は男だ。男だから。須田は俺を抱けない。
グレイの髪が瞳を隠す。口元だけがみえた。
「智也がいったんだろ。抱いてって」
パーカーを脱がされる。ベルトのバックルをいじってくる指先を掴んだ。止めようとしても、止まってくれない。下着ごとデニムをずりおろされる。シーツの上で裸にされた。
「抱いてあげる」
須田がシャツを脱ぐ。ボタンをあける指先をじっとみていた。心臓がうるさい。謝らないといけない。ごめんと謝って、こんなことやめないといけない。
わかっているのに、俺の身体は動いてくれない。須田の一挙手一投足に胸が高鳴る。
期待していた。須田とのセックスを望んでいる。
でも、でも、でもーー。
「……やだ」
須田とこれきりになりたくない。セックスをしただけで、いままでの関係が終わりになるのは耐えられない。一緒にご飯を食べたり、遊んだり、寝泊まりしたり。なんでもない日常をすごしていたい。これからもずっと、須田と一緒にいたい。
セックスをしたら、終わってしまう。
「俺もやだ」
頬にキスをされる。涙がつたった頬を、須田は何度もついばんだ。首筋を舐める舌が熱い。さっきまで、俺のくちに入っていた。舌を絡めていた。唇のぬくもりだけじゃない。舌のあつさも知ってしまった。
もう、戻れない。
「できるよ、俺。智也とセックス」
大きな手が俺の陰茎を包む。ゆるくすかれた。欲に正直な陰茎は勃起している。軽くしごくだけで完全に勃ちあがった。
「俺のも触って」
おそるおそる視線をさげる。須田の陰茎は、腹につきそうなほどに勃ちあがっていた。
「……なんで」
信じられない。俺は女じゃない。須田が興奮するはずない。
「なんでだろうね」
耳元でささやかれて背筋が震えた。指先が亀頭をくるくる撫でる。
「や、ぁ」
「智也も触って」
手を陰茎に導かれる。熱い陰茎に手のひらが触れた。軽く触れただけで、止まらなくなった。勃起した陰茎をゆるく握る。上下にこすった。
「きもち」
微笑んだ顔に汗が浮いている。とろけるような笑みにこころがじんとした。須田が好きだ。ずっと好きだった。幼い頃から好きだった人にキスをしてもらえる。抱いてもらえる。しんでもいい。いましんだら、幸せなままで終われる。
手のひらを筒にして上下に動かす。須田が気持ちよく射精できるように、亀頭からあふれる先走りを塗りこんだ。
「……なれてる?」
気持ちよくしたら喜んでもらえると思った。須田は喜んでくれない。舌打ちをすると、俺の陰茎を強くこすった。
「あ、う、ぁ、や、や、やだ、だめ」
「イくとき、ちゃんとイくっていって」
「や、いく、やだ、イくから、や、やだ」
先走りでぬるぬるした鈴口を指の腹が責める。何度も腰が浮いた。気をよくした須田は、鈴口に指をねじこむ。
「や、やだ、だめ、だめッ」
イく。イく。イく。
脳内で反芻した。くちにしない俺を須田はしつける。鈴口に爪をねじこみ、射精できなくしてしまった。大きな手が幹を撫でる。我慢汁で濡れた陰茎は真っ赤になっていた。
「ぁ、あ、あぅ、う」
「イくイくして」
「やだ……」
「恥ずかしいの?」
いたずらに笑ってくる。子供ときから変わらない笑い方に目の前がスパークした。
「~~~~ッあ」
身体が弓なりにしなる。腰だけを高く持ちあげて達した。達したのに、射精できない。腹の奥に快感がぐるぐる渦巻く。もどかしさで狂いそうだ。頭のなかが射精でいっぱいになる。出したい、出したい、出したい。
「や、ぁ、いった」
「知ってる」
「いったから」
「勝手にイったおしおき」
「やだ、や、やだ、すだ」
鈴口にねじこまれた爪を動かされる。ぐりぐりいじめられて星が飛んだ。
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