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第7話 サークル

 葛藤の多い学生時代だった。 男が好きな事を必死で隠した。それでも好奇心もあり、ハッテン場にも行ってみた。怖くて何も出来なかった。  遅まきながら、フレディ・マーキュリーがエイズで死んだ事を知った。  自分はいけない事をしたい、間違った人間なのだ。だから天罰のような病気があるのか?  間違った事をしてはいけないのに,その方向に心が行ってしまう。 (男に抱かれたい。あの固いからだに触れたい。)  思いは募る。  大学にシュールレアリスム、ダダイズム研究会というサークルがあるのを知った。  常軌を逸した自分は十分に芸術的な存在だ、とそのサークルの門を叩いた。  ただ、異質な自分という存在を正当化するために、逃げるようにそこへ行ったのだ。  そこには訳のわからぬ雑多な人たちがいた。 最高学府の希少な学問、美学を専攻する変人の集まりだった。 (この中になら、きっと男を愛する男がいるはずだ。それを学問で解説してくれるだろう。 あわよくば、解決して。)  それが芸術だ、と自分に都合よく解釈してそのサークルに通い始めた。  実際に必要な単位取得など蹴っ飛ばし、教養主義の巣窟にふみこんだのだった。  彼らは、タバコを吸って酒を飲み、退廃的で、口角泡を飛ばし、激論を戦わせていた。  いつも聞き役の俺に先輩が声をかけて来た。 「君は万年童貞の匂いをさせて目障りだな。 もしかしてホモ?」 「はい、具体的な事はわからないけど、 ホモセクシュアルなのだと思います。」 「それでは君は肛門性交をするべきだ。」 「え?俺、経験ないです。」 「俺たちだってバタイユのような娼館は、知らない。教えてあげたいけど、不得手なのでな。」 学者然としているボスも所詮は頭デッカチの童貞くんなのだろう。 「君には佐波氏を紹介しよう。」 と言い出した。 「佐波氏は変わり者の准教授だから、教えを乞うと良い。理三だ。医学部ではない。」

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