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第15話 未経験

 ハッテン場は男の匂いで充満していた。競泳パンツを教えてくれた男に手を取られて、並んでいる個室の一つに入った。  ドアが開け放たれている所は空室なのだ。中には簡単な海にあるようなビニールのベッドと奥にシャワーがあるようだった。  俺より小柄な男が肩を抱いてキスしてきた。ねっとりとしつこいキス。 「待って。俺、初めてなんだ。」 ベッドに寝かされて、可愛い、を連発される。 「初めてならバニラでいいか。 私も今日は挿入する気は無かったんだ。」  抜き合いだけなのをバニラというらしい。手が競泳パンツの上からペニスを弄る。  パンツは小さくて完勃ちすると息子が顔を出す。恥ずかしい。  ズリ下げられて勢いよく飛び出した俺の逸物。 もうギンギンに勃っているのを口に含まれた。  フェラが上手い。俺はすぐにイッてしまった。 お返しに相手のモノもフェラしてやった。 「ふふふ、下手ねぇ。」 そんな所も可愛い、と言われてしまった。  わりと綺麗なおじさんで良かった。 「記念にちょうだい。」 カウパーで濡れた競泳パンツを脱いでおじさんにあげた。 「いい身体、してる。また、会ってくれる?」 名刺を渡された。名前を聞かれて下の名前を言った。 「貴也、本名なの?」 「うん。」 「普通、本名は名乗らないよ。 初心(うぶ)ねぇ。」  おじさんは川口と名乗った。 ハッテン場体験はまあまあだった。もっと悪質な所か、と思っていた。  出る時におじさんが料金を払ってくれた。ここでも、五千円。室料らしい。  数回通って慣れたところで、初めて後ろに入れられた。  後にバーのマスターに本気のゲイのセックスを仕込まれる事になる。  ハッテン場のワンナイトセックスでは、本当の快感は得られなかった。  佐波氏への恋心は、いつも燻っていた。 先生は研究室で二人になると、フロイトとユングの関係性や、プラトンとソクラテスの師弟愛を語った。 (先生はずるいな。心を読まれている。)

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