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第32話 代理母?
「親父、虎ニに頼めばいいじゃないか。
跡継ぎを作ってくれ、と。」
「馬鹿野郎。虎ニは男が好きなんだよ。
まったく、みんながみんなホモとは、な。」
「えーっ?相手は若松か?
虎ニが惚れてんのか。頼もしいねぇ。」
「おまえの真似をしてんだよ。
とんでもない長男だ。家が滅びる。」
「その女の人は,代理母でいいって?」
「いや、本当に愛し合って出来た子供がいいんだと。人工授精じゃ嫌なんだと。
キチンと種付けしてもらいたい、と言っておる。」
「ただ、やりたいだけなんだろう。
私の事は知ってるのか?」
「ああ、おまえの大学の学生だったという。
子供の父親も母親も一流大学を出ているのが望ましい。血統だ、な。」
「うちの学生?
そんな物好きがいるのか。」
そんな事で、数日後、その女性が俺たちのマンションに訪ねて来た。
「初めまして、山城ミチルです。23才。
よろしくお願いいたします。」
(この人は自分がやろうとしている事をわかっているのだろうか?)
これから愛のないセックスを強要されるのだ。
3人で同居すると言っても3Pをやる訳ではないだろう。エロい事をイメージしてしまった。
龍一がこの人を抱く? 実感がわかない。
「まあ、かけたまえ。」
ソファを勧めて、みんな手持ち無沙汰だ。
釣り書きを持って来た。ま、履歴書か。同意書も入っている。申し分のない釣り書きだ。
この人は、龍一とセックスしてうまく妊娠したら9ヶ月以上拘束されるのだ。わかっているのか?
俺は猛烈に腹が立ってきた。これは嫉妬か。
許せない気持ちになって来た。
大門組長のお眼鏡にかなった女性だという。
龍一が了承すれば、結婚もあるという。組長の本心は結婚させたいのだ。
「なんか、俺は部外者だ。むしろ邪魔な存在だ。罠に嵌められた気がする。」
「待てよ、キミは私の事を知っていたの?」
「はい、実は大学でお見かけしてからずっと好きでした。」
「どんな人間か、わからないでしょ。
すごい変態かもしれないよ。DV野郎かもしれない。よく考えたの?」
「はい、先生がホモなのも知ってます。
でも、奥様がいた事もあるから、バイかな、と思ってました。」
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