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第60話 エロスとアガペ

「貴也はずいぶん色々抱え込んでるな。 トラウマだらけだ。今までよく頑張って来たな。」  ゴツゴツした手で頭を撫でてくれる。その手を取って掴まる。 「龍一って肉体労働なんかした事ないはずなのに こんなゴツい手をしてるんだね。」 セクシーなその手を握って抱きしめる。 「久しぶりにいろんな事思い出しちゃった。 龍一のせいだよ。」  抱きついて甘える。二人の関係が見えなくなっている。明日が見えない。  愛し合う事に完成はない。これで完璧、なんて死ぬまで無いだろう。もしあるとすればそれは、色褪せた倦怠だ。  別れを演出してお互いに新鮮な気持ちになるか、倦怠を克服してエロスがアガペに変わるのを甘んじて眺めるか。 「貴也はアキラの死を受け入れられない。それは正しい。受け入れたら、いつか悲しみにも終わりが来る。」 「そう、終わらせたくないんだ。」 「おまえには新しい男がいるじゃないか。 私ではダメなのか?」  龍一にしては珍しく執着を見せた。 「うん、龍一が好きだよ。 龍一を好きになればなるほど、アキラが可哀想な気持ちになる。もっと真剣に愛し合えば良かった、なんて。」 キスで口を塞がれた。狂おしいほど激しいキス。 「龍一、息ができない。」 「キスで死んだ人がいるだろうか?」 「俺が第一号だ。ハアッ。」 抱き合ってベッドに倒れ込んだ。龍一の身体はどこも全部男っぽい。毛深くてゴツゴツしている。  それが貴也の欲情を誘う。 (こんな男に抱かれている。) そう思うだけでイキそうだ。 「私たちは特別だ。そう思う事にしよう。」  龍一の手が貴也のシャツを脱がせて行く。 (この上なく綺麗な顔をした男が、俺を欲しがってくれてる。)  いつも落ち着いて客観的になろうと思うのに怒涛のように快楽が押し寄せて来る。  夢中になってしまう。手を伸ばして龍一の足を触る。すね毛の生えた足は、触ると気持ちいい。 身体中全部に手を伸ばす。  腿から手を滑らせその硬くいきり立っている愛しいものに手が届いた。 「ああ、龍一、またこんなに大きくなってる。」 龍一は笑って貴也のモノを掴む。撫でる。 「貴也もすぐに大きくなる。全く節操がない。」 そう言いながら感じる所に指が入って来る。  尻を触られるともう欲しくて我慢できない。

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