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第65話 古民家カフェ
「今、流行ってるんだよなぁ、古民家。
100年以上経たものを古民家というらしいよ。
梁が太くてしっかりした作りで人気なんだ。」
組の関係の不動産屋で言っていた。少し改装しないといけないらしいから、結構な資金が必要だ。俺は龍一をアテにするのが気が引ける。
思いつきで言ったことが実行に移されようとしている。自分は何も準備していない。
(これじゃダメだ。また龍一の手の上で踊らされてるだけじゃないか。)
それでも資金がないものは仕方ない。なぜか、組長が乗り気だった。
「資金ならいくらでも出してやるぞ。
龍一が私のところに頭を下げて来るなら、まあ、許そう。」
忸怩たる思いの龍一だったが、貴也が喜ぶなら、と父に頭を下げた。
貴也は知らなかった。龍一にそんな事させてまでカフェはいらないのに。
古民家は珍しかった。引き戸の大きな玄関から中に入ってみる。田の字に部屋が並んでいる。
フローリングにして靴のまま上がれるようにするか、和室に畳で靴を脱いで上がるか。
それによって内装のコンセプトが変わって来る。
「持ち主のお爺さんは納得したの?」
「いや、買いたいのが佐波龍一だと知ったら、もう、話が出来なくなったよ。」
「龍一が買うんじゃないでしょ?」
「もっと悪い。佐波興業を名乗ったら塩、撒かれた。資金は親父が出すんだ。」
フロント企業として佐波興業を名乗っているのも知らないものはいない。
「昔は博徒だったんだ。
ヤクに手を出したら、破門。堅気の皆さんにはご迷惑をかけない。線引きはしっかりしてた。」
「何がいけないの?」
「境界線が曖昧になって来たからだろう。」
貴也には組の人間はみんな節度のある、キチンとした人間に見える。
お爺さんは、ただ毛嫌いしているだけだろう。
若松も柳生さんも、惚れ惚れするようなイケメンで、かっこいい人たちだ。
組の中に、崩れた人などどこにもいない。礼儀をわきまえているように見える。
「昔から、何かあったの?
お爺さんが根に持つような事。」
「ああ、酷い事があった。
ウチが何かした訳じゃないが、爺さんにとっては、ヤクザは皆同じなんだろう。
どんな恨みを買ったのか?
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