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第81話 壊れる

 もう壊れていた。龍一と詩音の愛の暮らし。 詩音の魔性に絡め取られて、身動き出来ない。  もう論文も手に付かない。書籍化が決まっていて、期限があるが担当者も遅筆を諦めている。 「先生のデリケートな問題に口出しする権利はないですが、これは研究者たちから待望の論文ですから。」 「私は地獄に堕ちたんだよ。」 詩音を隠さない龍一に,関係者は皆呆れていた。  その二人の暮らしは、この上もなくスキャンダラスだった。 「こっちの方が売れるな。論文よりエロチックな私生活。」 編集者の声だった。 「龍一、僕,起きたよ。朝のアムールしよ。」 詩音の声にいそいそとベッドに急ぐ龍一はまるで腑抜けだった。  性に貪欲な詩音は、目覚めるとセックスを強請る。その声にもう股間が反応している。 (俺ってこんなに性欲が強かったか? 我ながら驚くな。詩音の身体は麻薬だ。)  身体にまとわりつく詩音の指が美しい、と弄られながら見惚れる。その指で、綺麗な手で、掴んでくれ。猛るこの怪物を。  もう末期症状だな、と自分に呆れる。 詩音は、ほぼ裸のような薄い部屋着で歩き回り,誘惑してくる。下着を付けない。 「龍一、来て。」 呼ばれると飛んできて抱きしめる。詩音の指で愛撫されて股間の男が立ち上がる。飽くなき欲望にまた、反応してしまう。  綺麗な口が龍一の男、を頬張る。綺麗な舌がチョロチョロと亀頭を這い回ると、もう、我慢できない。 「あ、ああ、詩音、エロティックだ。 私を壊さないでくれ。」 「壊れちゃえ!龍一なんか壊れてしまえばいい。 僕を愛さない龍一なんか!」  片時も緩めない舌の動きに、もう絶頂が近い。 「あ、あ、もう出るよ!」 綺麗な口で全部吸い取るように受けて飲み干してくれる。 「後で僕もイカせてね。」 腰が震えて収まらない。ビクビクする。 「ああ、詩音、悪い子だ。 おまえもイカせてやるよ。 イキッパナシにしてやる。」  詩音とのセックスはこの世の天国だ。だがこの頃は地獄の様相を呈して来た。  胸に抱き込まれてくちづけを強請る。 いつも堪能する綺麗な顔。いつまでも飽きない。 舌を絡ませて離れられない。

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