85 / 179
第85話 帰還 2
「ニュースで、あのクロード・レイがシオンと日本に来てるって。」
シオンの参加したミラノコレクションは大成功だった。いよいよ、世界のクロード・レイに見出されたシオン。名実ともに、世界のシオン、となって日本のファッション業界を席巻している。
クロードと結婚式を挙げる、と話題になった。
LGBTQの先駆者として、話題をさらっている。
テレビ番組の中で
「お二人は愛し合っているのですか?
男同士だと言うことに抵抗はないんですか?」
クロード・レイはそれに答えて
「結婚式のドレスをデザインしたんだよ。
シオンにそれを着せたいのさ。」
クロードの照れのようだった。
そばにいて、何も喋らず、その瞳でカメラを見つめてくるシオンは、ますます謎めいて魅力的だった。マスコミはこのゲイカップルに興味津々だった。
カフェ『暖家』でもシオンの話題で持ちきりだった。実物を見た女子高生が、噂を広げている。
「ここに来たのよ。すごくきれいだった。
でもクロードとは似合わないわよ。
シオンは身長186cmでしょ。
あのデザイナーは180cmあるかないか、
くらいでしょ。かっこ悪いよ。」
「クロード・レイって、デザインは素敵だけど、
本人はイケてない。」
「クロード・レイの新作バッグすごくいいよ。」
「欲しいなぁ。」
「ここに来た時、一緒だった男の人、恋人っぽかった。あの人ならお似合いなのに。
多分188cmは、あったね。すごいイケ、だった。芸能人じゃないな。」
(ふん、彼は医者だよ。)
心の中で答えた。龍一がイケメンなのを自慢したくなる。
(そっかぁ。
詩音はデザイナーと結ばれればいいんだ。
お似合いだよ。派手な世界で完結してろよ。
もうこっちに来んな。)
貴也は、まだ、龍一を許せていない。龍一は執筆に集中しているらしい。貴也の所にも来ない。
あれから何の進展もないのだ。
東京でクロード・レイのコレクションが始まる。世界同時発表。世界的にも注目の集まるファッションショーは日本がスタートなのだ。
出演するモデルはシオンの他に、やはり世界的なモデル、ユーツーだった。
クロード・レイの以前の恋人だった。日本にいる。クロード・レイの日本人好きは有名だった。
ともだちにシェアしよう!

