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第86話 貴也の部屋
そんなニュースの中、夜遅く、貴也のマンションに龍一が来た。
「こんなに夜遅く、何の用?
俺が寂しがってるとでも思った?」
「いや、私が貴也に会いたかったんだよ。」
部屋に招き入れた。座卓に向かって座る。
また、龍一の好きなほうじ茶を淹れている自分が情けない。
「詩音が日本に帰ってるらしいね。
会いに行かないの?」
「クロード・レイが一緒だから。」
店で、ゴシップ好きなとおるの彼女が
「一緒にあの有名なユーツーも来てるらしいよ。
ユーツーってクロード・レイの昔の恋人でしょ。」
と言っていた。業界人らしい屈折した人間関係だ。
ユーツーも世界で活躍するモデルだ。
「龍一は、ユーツーって知ってる?」
「ああ、名前だけ。」
クロード・レイを挟んで恋敵、なんてことはないのか。そういう業界のことは理解できない。
「龍一は今でも詩音の事が忘れられないんだろ。」
無理に忘れる必要はない。でも、貴也の胸はチリチリする。
「なんで俺の所に来るんだよ。
セフレにでもしたいのか?」
辛辣な物言いになる。本当は龍一に抱かれたい。言葉に出来ない本当の事。
胸に抱かれて
「寂しいんだ。貴也を無くした事が。」
「まだ、無くしてないよ。」
顔を見ながら静かなくちづけをした。
もう許してもいいだろう。お互いに寂しさを埋めるだけの相手でも。
貴也は自分から歩み寄った。首に抱きついて
「まだ、龍一のものだよ。」
優しく言った。感激して龍一は貴也を抱きしめる。久しぶりの丁寧なくちづけ。
畳に倒れ込んで抱き合う。
「ああ、貴也の匂い。」
夢中でシャツを脱がせて胸にくちづける。
ずっと禁欲生活だったから、身体中が敏感になっていた。脱がされて行く。龍一も着ているものを脱ぎ捨てる。懐かしいような、龍一の胸。
「はあ、こうしたかったんだ。」
髪に手を入れて顔を近づける。耳を噛んでくる、いつもの龍一の癖。舌が首筋を這う。
「くすぐったいよ。」
龍一の舌が胸を探る。感じて尖った乳首を見つけて吸い付く。背中がビクンと跳ねる。
「貴也は感度がいいなぁ。」
「や、だ。」
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