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第89話 会食

「やる事が派手だなぁ。」 住む世界が違いすぎる。そこに住みたいとも思わない。  ユーツーの事を調べで見た。わかる範囲の簡単な事だけだ。  奔放なユーツーは過去に色んな大物と付き合っていたらしい。本人に聞けば、切ない恋物語もあっただろう。その切なさが彼を磨いたのだ。  美しく生まれた罪。人を惑わせる。ユーツーと話して見たい。そんな気持ちにさせる。興味深い人だ。  龍一が何を思ったのか、ユーツーを交えた会食をセッティングした。自分もシオンに会いたいようだ。  クロードが来ると言うので、純和風の料亭が選ばれた。外国の人にアピールする日本のイメージ。  高級車が迎えに来た。俺は慣れないスーツを着て龍一のエスコートで出かけた。  こう言う時の龍一は物凄くイケている。着替えている龍一を惚れ惚れして見つめていると気が付いて貴也を抱きしめてキスしてくれた。 (俺の男。俺だけの、だったらいいのに。) 「貴也、スーツが似合う。愛してるよ。」 これから久しぶりに会う詩音に、少し興奮しているらしい。それが伝わって来るのが悔しい。 (どんな大きな会場での講演でも、臆する事のない堂々とした龍一なのに、詩音には緊張するんだな。) 「素敵だよ、佐波先生。」  海潮亭。 純日本風の料亭は、佐波大門の持ち物だった。  由緒正しい歴史ある和風建築を、そのまま、今に伝える。入母屋造りの建物は、県の文化財に指定されるも、いつも辞退して来た。  先代、佐波大門の父が愛した建物だった。 昔は、この辺りの盃事一切をここで取り仕切った。肝の据わった女将がいた。今はその娘が仕切っている。  車を降りて、粋な冠木門を入る。決して華美ではない。石畳の路地を通って茶室が見えて来る。  今日は茶会ではないので躙り口を過ぎて玄関に案内される。  引き戸を開けて女将が出迎える。 「ようこそ、いらっしゃいました。」  キリリと和服を着こなした五十絡みの綺麗な人だった。靴を脱いで奥に案内される。  家紋の入った半纏を着た下足番が丁寧に靴を片付けた。  クロードが珍しそうに辺りを見回す。

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