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第96話 クロードのコレクション

 クロード・レイの日本でのアトリエに呼ばれた。スチールカメラマンが普段着の貴也を撮影したいと言う。 「俺、こんな普段着でどんな顔すればいいんだよ?」  シオンとユーツーが来てくれた。 「緊張しなくていいよ。いつもの顔で。」  プロのカメラマンがデカいレンズのカメラを向けているのに普段通りの顔なんて出来ない。  アシスタントらしい人がレフ板を構えていろんな角度で写そうとする。 「無理無理、固いね。」  クロードが笑う。 (こっちは素人なんだよ。) 「貴也は自然に振る舞っていればいいんだ。」  それが無理だって。シオンとユーツーと同じに考えないで。 「俺、仕事受けてないよ。勝手に進めないで。」 「ここにきたから、オーケーなんだと思った。 モデルの仕事やる気ないの?」 「ないよ。全くない。」 「とりあえず、ワインでも飲むかい?」  グラスが運ばれて来た。透き通るような存在感の二人がワインを注いでくれる。  スタジオに、遅れて龍一がやってきた。 「龍一が受けたの? 俺,嫌だよ、モデルなんて。」  そばにいる二人と見比べても全く俺は見劣りがする。  テーブルに数枚の写真が並べられた。 「あ、これ、海潮亭の写真だ。」  浴衣姿の貴也も写っている。 「俺が和風の代表なわけないだろ。 日本人の代表でもないし。」 「自然な感じの貴也がいいんだよ。」 クロードが惚れ込んだと言う。 「クロード、街に出て見なよ。 日本人の若者だらけだ。掃いて捨てるほどいるよ。モデルになりたい奴も。」  貴也は呆れて何も言えない。 「普通の男が撮りたいんだ。PVにするんだよ。」  天使が舞い降りたような美しさは、もう間に合ってる、と言われた。  確かに美しい男なら目の前にいる。 なんだったら、龍一も美男仲間に入るだろう。 「明日は外で撮ってみよう。 どこかの神社とか、海とか。」  話が進んであしたも予定を決められた。 「俺は納得行かないよ。不本意だ。」 「ジタバタしても遅いよ。 クロードがやる気満々だ。」

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