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第97話 走り屋たち
貴也の古巣をロケハンした。九十九里。虎ニが地元のヤンキーっぽい奴に顔が利く。
「あ、セルフの野田さん。久しぶりです。
スタンド辞めちゃったんですね。」
いつものセルフスタンドにガソリンを詰めに来て顔見知りだった若い連中。
さすがに虎ニはヤンチャな奴らに顔が利く。
「若い奴を集めてくれ。」
クロードの要請に、龍一を通して声をかけたのだ。本物極道の虎ニの一声にみんな集まってくれた。
九十九里海岸の駐車場に集まって来た地元の走り屋たち。みんな貴也の顔を知っている。車の周りにしゃがんでみんなで話が弾んでいる。
クロードが来た。カメラマンを連れている。悪そうなガキらの真ん中にいた貴也が立ち上がった。貴也をカメラが追う。
「クロード、若い奴らを集めたんだな。」
「いいねいいね。今の貴也、撮った?」
ジェニファーも来ている。通訳は必須だ。
「若い人たち、カッコいいです。
皆さんがエキストラやってくれるんですね。」
改造車をバックにずらりとしゃがんだ若い連中を、クロードは即座に使う、と決めた。世界中に流される動画になる。
貴也だけ、衣装があるらしい。走り屋たちはその独自のファッションがクロードの目に止まった。
「いいねぇ、君たちの独特のセンス。
タトゥーだらけなのがかっこいい。」
みんな得意げだ。
「俺、特攻服でも着てくれば良かったか?」
「それはダサいよ。今時流行んねえよ。」
「俺たち暴走族じゃねえんだぜ。」
「どうせ、その他大勢だろ。」
「でも、ちょっと嬉しいな。」
テレビで見るようなその他大勢とは違う、最先端のデザイナーのプロモーションビデオなのだ。
かなりカッコいいはずだ。
「レペゼン九十九里って感じだ。」
「クロード、どんなコンセプトなんだ?」
スタッフらしい人が聞いている。ジェニファーを挟んで話している。
「うん、ここは何だか気持ちが掻き立てられる。
寂れた海岸もいい感じだ。」
「走り屋の人達には自由に動いてもらう。」
「ラッパーとかもいるんだって。」
「そう、社長ってのがボス。」
社長、はニックネーム。紛らわしい。
「社長、なんかラップバトルの動画を撮りたい。」
ジェニファーに言われてうれしそうだ。
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