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第104話 ラッパーたち

 このあたりのヤンチャな連中は、みんな車か、ラップか、そんな所に流れる。  この度、涅槃寂静、を立ち上げて社長がボスになった。 「ま、猿山のボスって事で。山崎です。 以後よろしく。」  目立つ所にいくつかピアスを付けている。 インダストリアルとか、トラガスとか。いずれ、身体中に増えるのだが、この時はまだ耳だけだった。タトゥーもそれなりに増えて行く。  メンバーは、昔からの遊び仲間と、車は必需品の田舎で走り屋の顔ぶれと、まだまだ増えそうだ。  ラップバトルの中心になるのは、F市のクラブでやっていたメンバーだった。 「DJシロです。よろしく。」 ボス社長にベッタリくっついているのは 「ジュネ。フィメールラッパー、よろしく。」 「阿修羅、高校生です。18才、成人だよ。」 阿修羅はこの時、実は15才だった。早く大人になりたいお年頃。  自己紹介が進む。ボスが言う。 「この度は、クロード・レイのプロモーションビデオの撮影にラッパーがご所望らしくて。  ギャラが少し出るからみんなよろしくな。」 ユニークな顔ぶれだった。  裏で虎ニの連絡網がモノを言った。ヤクザの連絡網? 「反社やヤクザもんは大嫌いだけど、虎ニさんは別格だから。」 「虎ニさんは漢(おとこ)だよ。 九十九里から大洗まで、知らない奴はいない。」  龍一の弟、虎ニはいつからマジもんのヤクザになったのか?この辺りをまとめている。温情派の極道だった。  食い詰め者のチンピラが多い世の中で、真面目に働くこの町の若者は捨てたものじゃない。  倉庫の品出しピッキング作業、か、親の後を継いで農業か。荒事の解体業や自動車のディーラー。配送業など、個人事業主は厳しい。  最近荒事は外国人が多い。違法な事も多い。 佐波一家が目を光らせている。  世界の状況はそんなに甘いものではない。働き者の外国人が安い賃金で仕事をさらってしまう。  彼らは全体に荒っぽい。この辺りは、若者の時給が関東でも最低水準なのだ。若い奴らには問題山積だ。  それで鋭いラップが生まれる。 いつの時代も若者はハングリーだって? 「ふざけんな!」 その気持ちが彼らの原動力なのだ。鬱屈した日常に、クロードのPV撮影が一石を投じた。

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