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第105話 デザイナー
クロードの新作が続々と持ち込まれた。仕事用に程度のいい空き家を借りて、少しリフォームして使っている。海岸に近い。
「女の子が着るような服だけど、貴也着てみて。
「これ、どうやって足、入れるんだ?」
ワザと穴を開けたタイツを穿かされている。黒穴あきタイツに黒い厚底ブーツ。
スリットが入っているように脇が空いたミニスカート。薄い網のような素材のシャツに体が透けて見える。
髪をグチャグチャにされてメークを施され、貴也はものすごく嫌がっている。
「俺、もういい年だよ。やめてくれ。」
背が高くて細身の貴也によく似合っている。
他にもオーバーサイズのカーディガンの中にレースのブラウスと同じ素材のパンツ。
ルーズフィットのレッグウォーマーと厚底靴の組み合わせ。
男だからこそ似合う可愛らしさだ。龍一が笑いながら抱きしめて来た。
「また、貴也の知らない一面を見たよ。
男の娘。新鮮だなぁ。」
フワフワにした髪を立てて少し束感を出してワックスで摘んだ。
投げやりに砂浜をまた、走らされた。
「はあはあ、厚底って疲れるぅ!女子は偉いな。
こんな靴とか、ヒールとか履いて暮らせるんだもんな。」
「貴也は、ドラァグクイーンみたいに、ジミーチュウのピンヒールなんか履けないね。」
「マジ、勘弁!」
午後からラップバトルをやるそうだ。
「この服、脱いでもいい?」
「うーん、ちょっとヒップホップっぽいのに着替える?」
クロードがまた、違うタイプの服を用意した。
海岸の駐車場にサウンドシステムが運び込まれた。何段も積み上げられたスピーカー。
DJブースが作られてDJシロが調整している。
何台も車を連ねてラッパーが集まって来た。
社長が仕切るらしい。
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