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第113話 位置情報
ケンの優勝祝いに中学の同級生が集まっていた。
「こんなに帰って来ないのおかしいよ。
携帯も繋がらないんだろ。」
「GPS付いてないの?」
「ガラケーだからな。」
詳しい奴がいた。
「壊れても位置情報は拾えると思うよ。
微弱でも何らかの電波は出てる。」
いろいろ探って電波を見つけた。GPSなら空から探せる。
「衛星が届く所にいればいいんだ。」
タブレットに繋いで位置情報が繋がった。
「割と近い所にいる。何か、されてるかもしれないな。」
「カチコミかけますか?」
「待ちなよ。そんな極道丸出し。
違ってたら大問題だろ。」
虎ニはすぐにでも飛んで行きたい。
恐ろしく胸騒ぎがする。
「僕、車で行くよ。場所,ナビに入れて。」
若松が若頭の柳生さんに話を持って行った。
「若松が付いて行け。状況がわかったら知らせろ。こっちも用意しておく。」
「僕、嫌な予感がするんだ。」
「若、私が運転しますから。」
ナビ画面が指しているのは、港に近い所だった。この県で一番大きな港。倉庫街だ。
近くに有名なスポーツセンターがある。
震えている虎ニの背中をさすって宥めながら、運転している若松。
港が見えて来た。
「あ、あそこ。廃ビルがある。」
「売りに出ているビルです。不良が占拠していて苦情が出ているんですよ。
ウチでも買い取ろうか、と目をつけているんです。」
「ウチのシマウチじゃないだろ。
こんな所まで、いいのか?」
虎ニの父は任侠の人だ。金筋の極道だ。住民が困っていたら手を貸す。この物件も買い取る準備をしていた。老朽化が激しいのだ。
オーナーは売り渋っていたが、焦げついた借金の返済に当てたいらしい。
「息子のために残したいのだ。
もう少し待ってくれ。」
「へんな若い奴の溜まり場にしないように、な。」
借金のキリトリに行って逆に頼まれてしまった。佐波一家は温情派の極道だった。
「親父は生きるのが下手ですね。」
「指詰めモンだぞ。そんな事言うのは。」
プール付きの変なビルだった。莫大な水道代が未払いになっていた。
「ここか? おんぼろビルだな。」
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