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第114話 優しい顔

 暴力的な李の顔が、ふと、緩んだ。 「綺麗だな、筋肉が。」 さっきまでの乱暴な動きが止まった。  奥まで突かれていた動きが止まって緩く逸物を抜かれた。 「くっ。」  痛みに声が出た。タオルで身体を拭いてくれる。出血でドロドロになっていた腰のあたりを優しく拭っている。  そしてケンの顔を見つめていた。 「おまえ、綺麗な顔だ。身体も芸術品のようだ。 ここまで鍛えるのは相当な努力だっただろうな。」  さっきまでの乱暴な力ではなく、優しくタオルをあてる。出血していた後孔も、濡れタオルで優しくクリームを拭き取る。 「うっ。」 抱きしめられた。ケンは理解が追いつかない。 あまりの変わりように、李を見つめてしまった。 「おい、帰るぞ。車を回せ。」 大きな毛布に包まれて、意外と大きい鍛え上げた李に抱き上げられた。軽々とケンを抱いて車に向かう。  陰部に塗られた麻薬のせいもあって、夢うつつで車に揺られて一軒の家に着いた。  また、抱き上げられて優しくドアを入る。 寝室のようだ。ベッドにそっと、寝かされた。  李が隣に潜り込んでくる。 「可愛い。綺麗だ。」  そう言って髪をかき上げ首筋にキスしてくる。 強く吸われた。 (あ、痕が残る!)  そんな事を心配した。飛び込み競技では、全身を観衆の前に晒す。  脱毛はもちろんのこと、傷一つ付けないようにする。セックスの名残などもってのほかだった。  ケンは恋人もいない。今までそんな心配とは、無縁だった。  いつの間にか、眠ってしまった。目が覚めたら、新しい下着を穿かされて服も着ていた。  新しいシャツとハーフパンツ。全然気が付かずに眠っていたらしい。 「起きたかい。酷い事して悪かったね。」 「あなたは、誰ですか?」 「この辺りを仕切っている『赤ドラゴン』の李(リー)だ。人に頼まれて、酷い事をした。  でも、おまえをよく見たら、乱暴は出来なくなった。俺の恋人にならないか?」 「は?」 (この人、何言ってるかわからない。) 「初めてだったんだろう。 ゆっくり準備もしないで、おまえの初めて、を奪ってしまった。  男は嫌いか?」 (マジ、この人何言ってんだ?) 「帰らなくちゃ。 みんな心配してると思う。」

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