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第115話 変な展開
虎ニは焦って廃ビルに飛び込んだ。床に壊れて落ちているガラケーを見つけた。
「ケンのだ。今時ガラケーなんてケンのに違いない。どうしよう、若松⁈」
ビルの中は汚く散らかっていた。
怪しいパケの小袋とか、C瓶(オロナミンCのような瓶)とかが割れて散らかっている。
ポンプ(注射器)や、あぶり用のアルミホイル。ここじゃ正気な奴はいないだろう。
たった今まで、何か、酷いことが行われていたようだ。
「拉致られた。この辺りはどこのシマだ?
若松、調べてくれ。応援を頼もう。」
スマホをいじっていた若松が
「半グレ、赤ドラゴンとか言うのがシメてますね。後ろにM会がついてるようです。」
「ドラゴンってことは、チャイマか?」
「元々ここの港湾は華僑が仕切ってたようです。
かなり、ヤバい臭いがしますね。」
そんな奴に仕事を頼むのは、地元の有力者だろう。政治家とズブズブの。
元オリンピック選手を父に持つあいつか?
虎ニも聞いたことがある。
「腑に落ちたよ。ケンのライバルのあの男。」
地方都市の名士を父に持つ。父親は、スポーツ選手のネームバリューを利用して保守で議員をやっている地元の有力者。
「奴らが描いた絵図が見えた。
柳生さんに話してくれ。戦争だ。」
武者奮いで歯の根も合わない虎ニの怒りが伝わってくる。
佐波一家でも、武闘派で知られる柳生さんに話したら、即戦争になるだろう。
若松は穏健派だ。
(このままでは人死にが出る。虎ニ坊ちゃんに何かあったら。)
「若、ここは一つ頭脳を使いましょう。」
「龍一兄貴みたいな事言ってんな。」
それでもビルのそばでふらついているガキを見つけた。シャブ、となんか雰囲気の違うキメ方をしたガキが一人、二人。
「この辺りはヤク解禁なんだな。
ウチは御法度だって言うのに。
ヤクに手を出したら即破門だ。」
ふらついてたガキをぶん殴った。
「ここから逃げた奴がいるだろ。」
タコ殴りで口を割らせた。
「李さんが急に攫って来た野郎を連れて帰るって。」
自宅に向かったそうだ。自宅はそれほど遠くない。李がアジトにしてるのは内陸の一軒家。
悪どい事をするために、人里離れた森の中だ。
「李ってのが、ボスか?」
李はゲイだと言う。たまに少年を攫ってくるための家。
「でも、李さん、変な事言ってた。
惚れた、とか何とか。」
若松が虎ニを見つめた。
「早く,助けに行かなくちゃ。」
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