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第124話 ジャンキー
スーリンはもう末期症状だった。
「おまえ、何やってんだよ。これ、シャブじゃねえだろ。」
赤ドラゴンの若い奴に聞いた。
「なんか、知らない奴が配ってんだよ。」
他の若い奴も来た。
「李、ヤバいよ。変なの、くれるんだ。
売人、紹介しろって。」
「そいつ、捕まえて来いよ。どこにいる?」
港の空き倉庫に溜まり場があると言う。
若い奴数人でその倉庫に行った。スーリンも連れて行く。
「おいっ。勝手にコンテナから出すな!
こんな所に運び込んで。」
大きな古い倉庫にコンテナを積んだトレーラーが一台、運ばれていた。
扉が開けられて、中から何か運び出されていた。
「誰だよ。誰の許可、取ったんだ!」
李は中の荷物を引き出してみた。
小分けにされた段ボールから、一本ずつバックになったものがパラパラっと落ちた。薬剤補填済みの注射器だ。瓶詰めの錠剤のような物もぎっしり入っていた。
「パックはお試し用よ。他の箱は大容量の業務用ね。吸うためのパイプもあるね。」
「中身はなんだよ。」
明らかに中国訛りの男が言った。
「アメリカではトランクって呼ぶね。
フェン○ニルとキシラジンの合成物よ。
フェン○ニル単体だと致死量は0.2mgよ。
かなりヤバいクスリね。」
李は致死量は2gだと聞いていた。自分の無知に焦る。
「おまえら、ここで売り捌く気か?」
「だからお試し、ね。」
日本で流行らせたらヤバい。
「何、勝手にコンテナ開けてんだよ。
誰のシマだと思ってんだ!
うちのスーリンに使ったのか?」
スーリンは前屈みに身体を二つ折りにして、フラフラと立っている。
「しっかりしろ!」
ここまで、無理矢理ついて来たスーリンを抱き抱えた。もう、人間じゃないみたいだ。まるでゾンビ。
「星輝、苦しかったの。怖くて怖くて、そのお兄さんが注射してくれた。
今は怖くない。ただ、だるいだけ。
まっすぐ、立ってられない。」
「心臓が弱ってるんだぞ。
なんて事してくれたんだ!」
倉庫にいた奴らは明らかにジャンキーだった。みんな身体が揺れて、二つ折りになってやっと立っている。
李は誰に怒りをぶつけたらいいのかわからなくなった。みんな弱っているようだ。
「元締めは誰なんだ?日本では、荷を解かないって言ってたのに。」
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