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第129話 一触即発
この港町を仕切る佐波一家の佐波大門と、広域指定暴力団M会の会長代行松田俊樹の邂逅だった。梁宋もこの町の華僑を束ねている。
とてつもない大物たちだ。市長の金子均の周りに張り付いている、小物感丸出しの市会議員の合田一太の父親もいた。
時が止まって見える。ケンのまわりだけ。
(ケンのオーラが見えるのは俺だけか?
そこだけ光っている。)
ケンも李のあの眼差しに絡め取られていた。
(ああ、やっと会えた。
もしも会えたら飛んでいって絶対離さない、って思ってたんだ。)
どうしたらまた会えるのか、そればかり考えていた。
(李は怖い人なんだ。また、拉致られて犯されるのか。)
それを待ってしまう。また、抱かれたい。
来賓の挨拶が終わって、ビュッフェスタイルの食事が用意されている。シャンパングラスが配られて乾杯の音頭がとられた。
李はずっと呉白日とばかり話していた。すぐに目がケンを追ってしまう。
ケンもチラチラこちらを見ている。
呉白日がケンの方に近づいて来て
「乾杯してくれませんか?私の兄弟と。」
ケンを連れて来た。グラスを軽く当てて
「乾杯。」
微笑むケンが綺麗だ。
ニコッと笑った李星輝のあの目に撃ち抜かれた。
「会いたかった、ずっと。」
驚いた顔をする李の目を見つめた。
時が止まった。言葉はいらない。見つめ合って今までの空白を埋めた。
「ケン、こっちに紹介したい人がいるのよ。」
クロードの呼ぶ声に振り返る。
「じゃ、呼ばれたので失礼します。」
呉白日が咄嗟にケンのスーツのポケットに李の名刺を入れた。個人の電話番号の入ったもの。
グッジョブ、白日!
向こうから人懐っこい可愛い男がやって来た。
「赤ドラゴンの李星輝さん?
僕、佐波一家の舎弟頭、佐波虎ニです。
仲良くしてください。この辺の若い奴、まとめましょう。」
「度胸あるなぁ。ドラゴン、知ってるんだ?」
「もちろん存じ上げています。
ケンカはしたくない。」
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