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第130話 電話番号

 ケンは夢を見てるようだった。誰に声をかけられても挨拶が上の空だ。ポケットの中の名刺を握りしめて、他に何も考えられない。  町の有力者に紹介されて、ケンは挨拶に忙しい。モデルとしても有名だった。 「久しぶりだねぇ。 もう高飛び込みはやらないの? モデルってホモが多いんでしょ。 おまえ、オカマ?」  派手な女を連れた合田一太が声をかけて来た。 イヤミを言いに来たのか。  貴也がさりげなく手を引いてくれた。 「ケン、あっちに美味そうなのがあるよ。」 食べ物をとってくれる。 「何だよ。俺、原田の友達だよ。 おまえ誰だよ。」 一太が割って入った貴也に文句を言っている。 背の高いケンと貴也に見下ろされて、イキがっている一太に 「友達、ねぇ? 俺はケンのマブダチだよ。 オカマで悪いかよ。俺もモデルだ。」  二人のイケメンの登場に、ツレの女は見惚れている。一太は、位負けか、スゴスゴと引き上げた。  スーツ姿のケンもすごくカッコいい。体にピッタリ合った仕立てのいいスーツがよく似合っている。引き締まった身体で、動きもきれいだ。  離れた所からそれを見ている李星輝。 (あの身体を抱きたい。今度は優しくするから。 俺の所に来て欲しい。)  李星輝も背が高くて引き締まった身体をしている。ケンカで鍛えた無駄のない身体。ケンよりガタイはデカい。ちょっと筋肉質だ。筋トレが趣味。呉白日も、李に劣らず中々のいい男だ。  甘いマスクのイケメンで、白日が結婚した時は、泣く女がたくさんいた。今は一児のパパだ。  二人ともかなり目立っている。李は黒髪を一つにまとめて、キリリとしたいい男だ。鋭い目つきが堪らなくセクシーだ。  呉白日とはガキの頃からの付き合いだ。李がゲイなのも知っている。李の女性経験は、スーリンだけだった。李は事が終わった後、スーリンが妹の可能性があると知って、二度と女を抱けなくなった。  元々男が好きだったかもしれない、と今となってはそう思う。  スーリンの弔いも終わった。もう頭はケンのことでいっぱいだった。  未だ、電話はかかって来ない。  この頃はヤクに手を出していない。このコロニーでシャブ中は片っ端から病院送りにした。離脱させるためだ。もうここにはヤクを持ち込ませたくない。  シノギも中古品の輸出だけにしたい。日本の中古車や廃棄する自転車を修理して貧しい国へ届ける。見方を変えたらビジネスチャンスはどこにでも転がっていた。

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