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第134話 惑溺
ベッドに横たわる。腕枕で背中からケンの頭を抱いている。バックハグの体勢だ。
耳元で囁く。
「ケンは仕事とか大丈夫なのか?」
「うん、今、無職。虎ニの居候。」
李がガバッと身体を起こして
「じゃあ、俺の所に来いよ。嫁に来い。
一緒に暮らそう。」
首に唇を滑らせながら、抱きしめて言った。
「でも、李は怖い組織の人だから。」
「虎ニの所といい勝負だ。
日本人か中国人か、の違いだけだよ。
俺は日本で育っているし,な。」
抱きしめて胸を触る。硬く尖って来た乳首を指が愛撫する。
「は、あ、ん、やめて、そこは弱いんだ。」
李はケンの身体に惑溺している。いくら抱いても終わらない欲情。
「また、欲しくなる。」
「もっと欲しがってくれ。俺も終わらないよ。」
筋肉質な足に触る。内腿を弄る。また、ケンの男が目覚める。やはり体力があるのか、李の欲望にいつも応えてくれる。
決して疲れた、と音を上げない。いくらでも受けてたつ。惚れ惚れするその持久力。
スポーツのお陰か?
世界中の、男を好きな奴らがケンの身体に舌なめずりしている。
李はケンを自分だけのものにしたい。焦る気持ちをどう伝えたらいいのか。
海辺のリゾートホテルでハネムーンのような日々を過ごして、ケンを連れて帰って来た。
あの森に囲まれたアジト。寄棟の大きな屋根を持つ、古民家だ。
家には常時たむろしているドラゴンの若い奴ら。李が嫁だ、と男を連れて来た。男を連れ込む事は珍しく無いが、嫁だ、と言うのは初めてだ。
「ボスがおとなしくなったな、と思ったら嫁、だって?男じゃないか。」
「呉さんみたいに身を固めてくれたら、いいのに。」
それでも、ヤクを扱わなくなって喜んでいた。
離脱した者たちが残っている。耐えられなくて逃げた者もいる。
「でも、実入りが減ったよなぁ。ヤクはもうかるから。」
「フェン○ニルは、ぼろ儲けできるって、アメリカの知り合いが言ってたよ。
何しろ原価が安いし、何にでも混ぜられるから、薄めて売ればかなりだろう。」
「馬鹿野郎。ほんの少しで死ぬような薬だぞ。
梁大人に殺される。」
不穏な空気が流れ始めた。
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